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格闘技・プロレス

茶番と揶揄される一戦に抱く“幻想”とは。「厳粛な真剣勝負」とは違うメイウェザーvs朝倉未来をどう見るべき?

橋本宗洋

2022.09.23

ついに対戦の時を迎える朝倉未来とメイウェザー。すでにさまざまな「娯楽」を提供している両者の一戦はどう楽しむべきなのか?(C)AbemaTV, Inc./RIZIN FF

ついに対戦の時を迎える朝倉未来とメイウェザー。すでにさまざまな「娯楽」を提供している両者の一戦はどう楽しむべきなのか?(C)AbemaTV, Inc./RIZIN FF

“メイウェザー狂騒曲”が再び日本にやってきた。

 フロイド・メイウェザー(アメリカ)は、9月25日に『超RIZIN』さいたまスーパーアリーナ大会に出場する。対戦相手は日本屈指の人気選手である朝倉未来(トライフォース赤坂)。ルールはボクシングルールに準じるスタンディングバウト。3分3ラウンドで、契約体重なしのエキシビションだ。

 メイウェザーの日本でのファイトは、2018年の大晦日以来。RIZINのリングで、那須川天心を今回同様のルール(契約体重はあり)で倒している。ただし、この時もエキシビションのため、公式記録には残ってはいない。

 前回も、そして今回も、本当に不思議なシチュエーションである。

 メイウェザーのプロボクシングレコードは50戦50勝。無敗のまま世界5階級も制覇した。無論、史上初の快挙だ。そして現役引退後もエキシビションでリングに上がり、ファイトマネーを稼ぎ続けている。現役のボクサーではないから、ボクシングのリングでなくてもいい。ボクサーではない那須川や未来とも拳を交える。それがメイウェザーの「エンターテイメント」なのだ。45歳になった元世界王者は言う。

「私はキャリアを終えた後、エキシビションで楽しんでいる」
 
 ボクシングの公式戦でもなければ、ボクシングのリングでもない。相手もキックボクサーやMMAファイター(総合格闘家)ばかり。アメリカではボクシングのプロライセンスを持つ人気YouTuberのローガン・ポールとも2021年6月にエキシビションを敢行し、話題を提供した。

 会見では舌戦も展開する。先月30日にハワイで行なった未来との2度目の会見には、RIZIN参戦中の元K-1ファイター・平本蓮を連なって登場。未来とは常にSNSで煽り合っている平本がメイウェザーの「通訳」を買って出て、未来をこき下ろした(本当にメイウェザーがそう言っていたのかは分からないが……)。

 あらゆる面で、コアで、真面目なファンが望む“厳粛な真剣勝負”とは違っている。ゆえにメイウェザーのエキシビション路線に批判的な者もいるし、とりわけ今回の未来戦は“茶番”とも言われている。那須川は少なくとも打撃の専門家だったが、未来はMMAファイター。今はオールラウンダーに近い。ボクシングをやらせたら誰がどう見てもメイウェザー有利。本来はやる意味のない、話題性だけの闘い。だから茶番だと言うわけだ。

 確かにその通りだ。しかし、である。メイウェザーvs.朝倉未来を見たいか見たくないかと言われたら、やはり見たい。メイウェザーの圧勝、あるいはフルラウンド闘って内容で圧倒という結果になる可能性は高いかもしれないが、そこで何が起きるのかを確かめたい。そういう気持ちを持つ人間が数多くいるからこそ、大会のチケットは売れている。そして、こうして原稿のオファーも来る。これだけ話題になっているというのは、そこにある“何か”を人々が感じ取っているからに違いない。

 では、その“何か”とはどんなものだろう。筆者は“幻想”だと考えている。
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