マラソン・駅伝

ゴール直前に一体何が? 失格で幻となった道下美里の“世界新記録”。運営側は「公正に判断」と説明【東京レガシーハーフ】

永野祐吏(THE DIGEST編集部)

2022.10.17

フィニッシュ直後の道下(左)と志田氏(右)。後ろの運営スタッフはゴールテープを撤収している。(C)田中研治(THE DIGEST写真部)

 夢のような時間は儚く散った。

 10月16日に行なわれた『東京レガシーハーフマラソン2022』の視覚障がいT12の女子部で、道下美里(三井住友海上)が1時間23分34秒で走り、世界新記録を叩き出した。しかし数分後、事態は急転。なんと隣を並走していたガイドランナーの志田淳氏が選手より先にゴールラインを越えために"失格"となった。

 ガイド役のエキスパートである志田氏のミスに多くの関係者が目を疑った。そんななかでレース直後に報道陣の前に現れた同氏は、「本当にこれは私のミス。私の方が先にゴールしてしまった」と反省を吐露。そのうえで、ゴールラインを先にガイドが越えてしまう原因を生んだ理由のひとつに、運営側とのやり取りがあると明かした。

「ゴールの100メートル手前くらいで、どちらに行くか指示している係員がいらっしゃいまして、我々もどっちに行っていい状態か分からなかった」

 最後の直線で誘導員が指示を送っていたが、志田氏の耳には届かなかったようだ。一方、道下は「私は『内側』という声は聞こえた。(普段は外側ゴールが多いため)私もちょっと戸惑って、志田さんも『どっちどっち』ってなった」と混乱に陥っていたと明かしている。
 
 加えて、同時刻のフィニッシュエリア、とりわけインコース側はゴールしたランナーで混雑していた。同大会中継局のYouTubeのゴール正面映像には、彼女たちがフィニッシュする5秒前になってようやくゴールテープを準備し始める様子が映し出されている。さらによく見ると、ゴールの裏には、倒れ込んでいたランナーもいた。仮に誘導通りにゴールテープを切っていたとするならば、そのランナーと接触していた可能性もあったのだ。

 大会後の会見で、早野忠昭レースディレクターは、「どうしてそういうことが起きたのか原因究明中。もちろん運営側の責任であれば改善していかないといけない。今後調査して対応したい」と話すにとどめたが、その3時間後、主催者である東京マラソン財団は報道陣宛てに以下のような報告をあげている。

「ガイドランナーが先にフィニッシュをしたため、失格となったということを説明し、選手側は説明に対し抗議を行いませんでした。大会主催者としてはルールに照らして、公正に判断されたと認識しております」

 あくまで現時点で運営側に非はないという見解だ。抗議に関して志田氏は「こちらから抗議はしなかったですが、改善の申し入れはしました」と話していたが、仮に抗議していたら結果は変わっていたのだろうか――。

 真相は藪の中だが、今後の大会運営に向けて、何かしらの対策を講じる必要がありそうだ。

取材・文●永野祐吏(THE DIGEST編集部)

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