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“プロスケーターの第一歩”――。羽生結弦が初の単独アイスショーで魅せた幻想的演出に会場も感嘆「これからの物語はプロ」

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2022.11.04

羽生結弦はプロ転向後、初の単独アイスショーを開催した。写真:滝川敏之

"プロフィギュアスケーター・羽生結弦"の第1歩が幕を開けた。
【PHOTO】プロフィギュアスケーター・羽生結弦の魅力が凝縮された単独アイスショー『プロローグ』
 羽生結弦が4日、神奈川県・横浜市のぴあアリーナMMにて初の単独アイスショー『プロローグ』の横浜公演1日目を開催した。今年7月19日に競技生活から退き、プロ転向を表明してから約3か月半。18時からの開演を待ちきれず、多くの羽生ファンが詰めかけ会場は超満員となった。

 主催者発表によると、7900人の観客が羽生のプロ第1歩を見守った。公演当日までプログラム内容が一切明かされず、謎のベールに包まれていたなかで、羽生が満を持して披露したのは"これぞ、羽生結弦"と言える、珠玉プログラムばかりだった。

 冒頭から前代未聞の出来事が起こる。暗闇からスポットライトを浴びて羽生がリンクを滑り出すと「6分間練習を始めてください」とのアナウンスが。どよめく観客をよそに、羽生は現役時代と同じように氷の感触を確かめながらトリプルアクセル、4回転サルコウ、4回転を含んだ3つのコンビネーションジャンプなどを披露。アイスショーとは思えない緊張感の中で上着を脱ぐと、あの伝説のプログラム『SEIMEI』の衣装に観客は沸いた。

 演技前、両手を胸の前で合わせる"現役選手"と同じルーティーンで終えると、笛と太鼓の音が鳴る。羽生自身も「思い入れがある」と語る『SEIMEI』は、2015年グランプリファイナル(スペイン・バルセロナ)で、当時の世界歴代最高得点を叩き出し、2018年平昌オリンピックで66年ぶりの男子シングル連覇を達成した名プログラム。冒頭から完全にファンの心を掴んだ。

 続く2つ目は、三味線の生演奏に乗りながら『CHANGE』、3つ目は当時17歳で世界選手権のメダルを獲得した『ロミオ+ジュリエット』を優雅に、そして華麗に舞った。

 4つ目の『いつか終わる夢』から5つ目の『春よ、来い』にかけては、氷上にプロジェクションマッピングを実施し、色鮮やかで幻想的な演出を披露。まるで観る者の心を浄化させるような見事な演出と演技で、会場はスタンディングオベーションの総立ちだった。
 
 途中でファンとの「トークコーナー」や「リクエストコーナー」を挟むなど、随所に羽生のオリジナリティ溢れるアイスショーでファンを楽しませ、羽生の魅力が存分に詰まったプログラムの連続だった。また、この日は羽生が"恩師"と語る都築章一郎氏も来場し、最前列で羽生の演技を見守った。

 アンコールではギターの音色が奏でられると、会場の雰囲気はガラリと変わる。2014年ソチオリンピックで日本男子初の金メダルを獲得し、世界トップスケーターへと駆け上がった『パリの散歩道』を披露すると、会場のボルテージは最高潮。興奮冷めやらぬまま、初の単独アイスショー1日目は幕を閉じた。

 羽生は公演後「プロ転向後、会場を含めて時間がなかった中で作って頂いたスタッフの皆さんには感謝しています。自分の物語のプロローグ、新たな決意を胸にして、皆さんからもらった声援を感じながら次のステップにつながるように続けていきたいです」と無事に公演を終え安堵した。

 そして「これからの物語はプロだからこそ、目標はまだ見えていない。プロローグを毎日成功させるために努力し、一つ一つ集中したことが、また学んで次につながる。フィギュアスケートの限界を超えていきたい。これからの自分の物語を作っていきます」とプロスケーターとしての決意を改めて述べた。

 羽生にとって11月4日は「プロフィギュアスケーター」として名を刻んだ、プロ人生の記念碑『プロローグ』となった。

取材・文●湯川 泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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