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私たちはなぜ三浦璃来&木原龍一に魅了されるのか? 稀有なパートナーと巡り合えた2人から生まれる心地よさの秘訣

長谷川仁美

2022.12.08

息の合った演技で観客を魅了する三浦&木原組。「りくりゅう」の愛称で親しまれる。(C)Getty Images

 北京五輪団体戦3位、個人戦7位、世界選手権2位と、昨季、一気に世界トップに躍進したフィギュアスケート・ペアの三浦璃来&木原龍一。滑りや技の滑らかさだけでなく、2人が醸し出す雰囲気が、とにかく心地いいのがこのペアの魅力だろう。そんな心地よさには、たしかな理由がある。

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 2人のスケーターが出会ってペアを組むとき、最初にするのは、2人が氷を蹴って進むタイミングを合わせることだという。ペアの場合、2人の身長差=歩幅の差もあることから、ある程度自然にタイミングを合わせられるようになるのが大切だ。

 その点、三浦&木原は、タイミングの相性がよかった。ひと蹴りするときのタイミングが、もともとまったく同じだったという。そのため、「お互いが(氷を)押すタイミングが合うと、本当に気持ちよく何の力も入れずに一緒に滑れる」(三浦)し、「もともと2人ともスピードを出すことが好きで、スピードの出し方を体が知っていたんです。その力が2人分重なっているので、トップスピードに乗るのがはやいのかなと思います」(木原)という。

 だからこそ生まれる、心地のいい滑り。三浦&木原組の演技の心地よさのひとつは、そうしたところにある。

 ペアやアイスダンスは、パートナーチェンジによって、一気に選手の印象が変化することも少なくない。たとえば、2014年ソチ五輪優勝のタチアナ・ヴォロソジャール&マキシム・トランコフ(ロシア)は、互いに別のパートナーと組んでいたときにはどうしても噛み合わせきれずにいたが、2人が組むと一気に世界の頂点に立った。

 たとえ個々に高い技術力を持っていても、「スケートが合う」「人としての相性が合う」といった合致がなければ、ペアとして自然に流れるように演技をするのは容易ではない。それが、ペアの苦しさでもあり、喜びでもあるのだ。
 
 三浦と木原がペアを結成したのは2019年夏。三浦にとって木原は2人目のパートナー、木原にとって三浦は3人目のパートナーだ。前述したとおり、三浦&木原の場合、初めて滑った時から、スケートのタイミングが合致していた。そういう、稀有なパートナーと巡り合えたのだった。

 さらに2人を見ていくと、なんだかほのぼのとしていて癒されるようで……。他のペアとは明らかに違うことに気づくだろう。もちろんアスリートとして競技をしているのでほのぼのとはしていないのだけど、演技序盤から木原の顔に浮かぶ自然で穏やかな笑みや三浦を見守る視線が、それを受けて笑顔になっていく三浦の様子が、なんだかほのぼのと穏やかに見えて、心地いいのだ。

 パートナーとの動きを合わせるために、どのペアも、演技中にパートナーのことをよく見ている。にもかかわらず三浦&木原が他と違って見えるのは、木原の視線に、三浦への優しさや見守るようなぬくもりがあるからかもしれない。さらに、スロージャンプやツイストリフトが終わるたび、「いいね!」というような視線を送ると、それを受けた三浦は、少しずつ緊張がほぐれていき、笑顔がこぼれ始める。その様子にも、ほんわかとさせられる。
 
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みんなに「うまくなった」と驚かせる演技ができるように、と