魔裟斗が牽引し、ブアカーオ(タイ)など数々のスター選手が誕生したK-1 WORLD MAXにおいて、ジョルジオ・ペトロシアン(イタリア)は“究極のチャンピオン”と言うべき存在だった。
日本の舞台に初めて登場したのは、2009年4月に開催されたK-1 MAX世界トーナメント。イタリアから鳴り物入りで参戦したペトロシアンはいきなり優勝を果たすのである。
1回戦でジャバル・アスケロフ(ロシア)に勝利すると、決勝大会ではアルバート・クラウス(オランダ)、山本優弥、アンディ・サワー(オランダ)を次々と撃破して優勝。歴代王者2人を倒して頂点に立っただけでなく、アスケロフと山本にはKO勝ち。サワーからもダウンを奪うという、ほぼ完璧な内容での優勝劇だった。
この年の大晦日に長年K-1を牽引してきた魔裟斗が引退する。そんなカリスマファイターがファイナルマッチの相手として希望したのは、他でもないペトロシアンだった。闘いたい理由はずばり「一番強い選手だから」。ペトロシアンの怪我のためこの一戦は実現しなかったものの、魔裟斗も強さを認めるほどの存在だったのだ。
さらに2010年にもK-1 MAX世界トーナメントで優勝を飾ったペトロシアンは史上初の連覇を達成。旧K-1が活動しなくなると欧州のGLORYに活躍の場を移すのだが、そこでも2012年に開催されたトーナメント優勝。続いてベラトール、ONEとメジャーイベントに次々と参戦しては結果を残し続けた。
2018年に参戦したONEでも世界トーナメント制覇を果たしたペトロシアン。キャリア全体では111戦して、わずか3敗と圧倒的な勝率を誇る。もっとも、格闘技において何よりも観客に好まれるのは、迫力のある打ち合いだ。その意味では、彼は万人受けするタイプではなかった。
持ち味はテクニック。倒す技術もあるが、それ以上に目立ったのはディフェンスだ。相手の攻撃を見切り、とにかくかわす。そして気づけばペースを自分のモノに持ち込んでしまう。
「倒すか、倒されるか」ではなく「打たせずに打つ」。そんな彼のスタイルは選手としての理想形と言っていいだろう。“ドクター”という異名もあった。医者のように相手の患部=弱点を探り当ててしまう。あるいは冷徹なメスさばきという印象もあったからこそ授かったものだった。
テクニシャンは地味に思われがちだ。しかし、ペトロシアンの場合はテクニックが際立つことで“魅せる”試合になっていた。K-1ファイターとしては異色、しかしそのハイレベルな闘いは記録だけでなく記憶にも残り続けるだろう。
取材・文●橋本宗洋
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持ち味はテクニック。倒す技術もあるが、それ以上に目立ったのはディフェンスだ。相手の攻撃を見切り、とにかくかわす。そして気づけばペースを自分のモノに持ち込んでしまう。
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テクニシャンは地味に思われがちだ。しかし、ペトロシアンの場合はテクニックが際立つことで“魅せる”試合になっていた。K-1ファイターとしては異色、しかしそのハイレベルな闘いは記録だけでなく記憶にも残り続けるだろう。
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