バレーボール

体罰・暴力が相次ぐ日本バレーボール協会の川合俊一会長が「たとえ恩師でも、隠蔽は一切しません」。調査機関も新設へ

北野正樹

2023.04.27

暴力撤廃を推進する川合俊一会長 写真:北野正樹

 日本バレーボール協会(JVA)は26日までに、協会内に体罰や暴力、加盟団体の不祥事などを独自に調べる調査機関を新設する方針を固めた。相次ぐ指導現場での体罰・暴力を受け「暴力撤廃アクション」を公表しているが、調査を依頼し報告を待つ現在の方式を改め、主体的、機動的に問題に対処する体制を構築する。
 
「たとえ恩師や先輩であろうと、隠蔽は一切しません。バレー界を挙げて、暴力撤廃に取り組んでいきます」

 JVAの男子強化委員(4月12日付で辞職)による体罰・暴力疑惑が表面化して約10日後、取材に応じた川合会長が語気を強めた。

 3月16日の理事会後のリモート会見で「いまだにこんな指導者がいるのかと、はらわたがにえくりかえる思い。ミスを腹立たしいと思うから暴言を吐きやすくなる。指導者に人間力がなければ指導できない。人間力アップなど根本的な部分から徹底的に直していかなければならない」と嘆いた川合会長。

 日本の指導現場のトップにいる男子強化委員による体罰・暴力疑惑について「事実関係がまだ分からないが、強化を指導する立場の強化委員にそのような行為があったのなら悲しい」と表情を歪めた。

 JVAは、この強化委員から「ご迷惑をおかけした」と申し入れのあった辞職願を受理。現在は前強化委員が監督を務める大学や全日本大学バレー連盟に調査を依頼し、報告を待っている状態だという。

 今後、報告を待ち指導者資格の停止などを含めた処分を検討するが、川合会長は「弁護士を含めた調査機関を作ろうと考えています」と明かす。

 バレー関係者によると、現在はJVAとして加盟団体などに対し調査する権限は有しておらず、大阪府バレーボール協会の当時の経理担当理事による協会資金の着服問題などについて、指導は出来ても組織の刷新などを命ずることは出来ないのが実情だった。

 独自に調査機関を持ち、調査権限を明文化すれば不祥事対応は格段にはかどり、再発防止にもつながる。

 一方で、JVAは指導者だけでなく、選手や保護者らも対象とした【指導と暴力の間に隠れた「未暴力」に目を向ける『暴力撤廃アクション』】を3月24日に発表し、体罰・暴力をバレーの現場からなくす運動を始めた。

「それって、指導ですか? 暴力ですか?」と呼び掛け、明らかな暴力と健全な指導の間にあるどちらかとも言い切れない曖昧な行為を、見逃せない「未暴力」と位置づけ、正面から向き合うと宣言。協会内に「指導現場における暴力等対策委員会」も設けている。

 暴力撤廃への取り組みを広く知ってもらうために、3月25日付の日本経済新聞に1面広告を出したほか、協会ホームページ(https://www.jva.or.jp)の「暴力撤廃アクションウェブサイト」や電話(03-3502-8232)で通報や相談を受け付けている。

 JVAによると、すでに数件の通報や相談がメールや電話で寄せられており、地元の教育委員会へ報告するケースもあったという。
 
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体罰・暴力に対して“聖域なき改革”を進める覚悟