格闘技・プロレス

「全然死んでない」“塩試合”で平本蓮に漂わせた不気味さ。斎藤裕を相手に噛みしめた成長「俺は着々と強くなっている」

THE DIGEST編集部

2023.05.01

大注目の一戦に挑んだ平本は斎藤に決定的な一撃を許さずに、戦い続けた。この内容からは彼の成長が滲み出た。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 4月29日に国立代々木競技場第一体育館で行なわれた「RIZIN LANDMARK 5」。チケットは即完売で、当日券の発売もなしという大注目の大会で熱視線を送られた平本蓮は、斎藤裕との接戦を終え、こう漏らした。

「いや、俺は全然死んでないので、前へ行くだけです。次、またいい試合を見せます。絶対に勝ちます」

 今から約1年前のMMA2連敗を喫した鈴木千裕戦後に「こんなんで俺は終わりじゃない。絶対にまた戻ってくる」と涙ながらに漏らし、悔しさを噛みしめるしかなかったひ弱な青年はそこにはいなかった。言い訳を並べるよりも、ひたすらに次を見据えた平本からは、飛躍のキッカケを掴みかけている雰囲気が漂った。

 結果は判定の末に1-2の敗戦。元RIZINフェザー級王者で、MMAにおいては一日の長がある斎藤の組みに思うような流れを生み出せなかったのが判定に響いた。それは平本自身が「MMAをやりすぎてしまったなって感じ。もっと自分のボクシングを信じてやればよかったな」と認めるところでもある。
 
 ただ、斎藤に一方的にやられていたわけではない。むしろ「おぉ!」と会場を沸かせたのは、平本の方が多かったのではないか。とりわけ目立ったのはディフェンス力だ。

 序盤から執拗にテイクダウンを狙う斎藤に対し、平本が力で押し倒される場面はほとんどなく、巧みに身体を使って受け切っていた。倒されてから寝技に持ち込まれる危険なシーンもなかったからこそ、ダメージもほぼゼロ。試合の記者会見で「次の試合がしたい」と豪語できた。

 昨年から剛毅會空手で研鑽を積んだ効果があったと言える。というのも、空手は相手の動きに合わせて、攻撃に転じる流派であるからだ。ゆえにSNSで「塩試合」と揶揄された内容も、斎藤に致命的な決定打を打たせなかった守備は成長の証と言える。

 もっとも課題はある。一番の問題点は打力だ。相手の動きを見切ったのは良かったが、やはり攻撃に転じなければ、格闘技では勝者になれない。中盤以降に守戦を強いられた平本は隙を見てはジャブやローキックなどを繰り出したが、いずれも状況を一変させるような一打ではなかった。実際、受けた斎藤も「大きなダメージはなかったですね」と語っている。
NEXT
PAGE
宿敵・朝倉未来も認める守備力と成長度