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「どんどんステップアップ」タスティエーラのポテンシャルに堀調教師も感服。一方、ソールオリエンスは“勝負のアヤ”に泣く【日本ダービー】

三好達彦

2023.05.30

直線抜け出した12番タスティエーラ(中央)が90代目のダービー馬に君臨した。写真:産経新聞社

直線抜け出した12番タスティエーラ(中央)が90代目のダービー馬に君臨した。写真:産経新聞社

 5月28日、第90回 日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)が行なわれ、単勝4番人気のタスティエーラ(牡3歳/美浦・堀宣行厩舎)が接戦を制して優勝した。

 オッズ1.8倍の1番人気に推された皐月賞馬ソールオリエンス(牡3歳/美浦・手塚貴久厩舎)はよく伸びたものの、クビ差届かず2着に惜敗。ハナ差の3着には6番人気のハーツコンチェルト(牡3歳/美浦・武井亮厩舎)が食い込み、4着には上がり最速33秒0をマークした9番人気のベラジオオペラ(牡3歳/栗東・上村洋行厩舎)が入った。

 また、スタートの際に躓いたドゥラエレーデ(牡3歳/栗東・池添学厩舎)は騎手が落馬して競走中止。2番人気に推されていた青葉賞(GⅡ)勝ち馬のスキルヴィング(牡3歳/美浦・木村哲也厩舎)は、最後の直線で急に減速して大差の最下位で入線。騎手が下馬した直後、馬場に倒れ込んで死亡(急性心不全)する悲劇に見舞われた。
 
 上位4頭が同タイムでゴールするという史上初の激闘となった今年の日本ダービー。スリリングなゴール前の鍔迫り合いとなったのは、予想外の展開にあった。

 スタートから飛び出したパクスオトマニカ(牡3歳/美浦・久保田貴士厩舎)が単騎逃げに持ち込むと、向正面でピッチを上げて後続を引き離しにかかる。タスティエーラは4番手の好位に付けると、ソールオリエンスはそれを前に見る形で6番手を追走。武豊騎手への乗り替わりもあって3番人気に推されたファントムシーフ(牡3歳/栗東・西村真幸厩舎)は中団の後ろ目で出方を窺った。

 第3コーナー手前では2番手以下に10馬身ほど引き離して大逃げに近い展開に持ち込んだパクスオトマニカだったが、1000mの通過ラップは意外なことに60秒4というミドルペース。したがって、そこから大きく離れた馬群はかなりのスローペースで進んでいたことになり、勝負は上がりの競馬に持ち込まれる公算が高くなった。

 後続馬群も前との差を詰めながら迎えた直線。パクスオトマニカが粘りを見せるが、先行した馬たちがそれに迫り、さらにはその中からタスティエーラが抜け出してくる。その直後にいたソールオリエンスは前に壁ができていたため、仕掛けをわずかに待たされる。

 残り200m付近で前を捉えたタスティエーラが先頭に躍り出ると、進路を確保したソールオリエンスはもちろん、後方から徐々に位置を押し上げていたハーツコンチェルト、コースロスを避けてインを突いたベラジオオペラが猛追。ゴール前ではこの4頭の息詰まる追い比べとなったが、最後まで鞍上の叱咤に応えて粘り切ったタスティエーラが、襲い掛かってくる3頭をわずかに抑え切って先頭でゴール。第90代ダービー馬の称号を手にした。

 ちなみにレースの上がり3ハロンは33秒5だが、上位に来た馬のほとんどが33秒台の上がりを叩き出しており、2分25秒2という遅い走破タイムが、いわゆる「スローの上がり勝負」となったことを如実に表している。
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