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「どんどんステップアップ」タスティエーラのポテンシャルに堀調教師も感服。一方、ソールオリエンスは“勝負のアヤ”に泣く【日本ダービー】

三好達彦

2023.05.30

 堀調教師は2015年のドゥラメンテに続き、日本ダービーはこれが2勝目。自身が管理したGⅠレース2勝(2016年の香港ヴァーズ、2017年の宝塚記念)のサトノクラウンの初年度産駒での勝利だっただけに、感慨もひとしおだっただろう。

 プレビュー記事でも触れたが、タスティエーラは今年に入って共同通信杯(GⅢ=4着)、弥生賞(GⅡ=1着)、皐月賞(GⅠ=2着)を経て間隔を詰めての4戦目となるため、仕上げに工夫を凝らしてきた。レース間の休養先をノーザンファームしがらきから天栄に変更して輸送の負担を減らす、テン乗り(初騎乗)となるダミアン・レーン騎手を調教に数多く乗せるなど、大一番に向けてでき得る限りの方策をとってきたという。

 堀調教師は、タスティエーラを初めて見たときに、ダービーを勝つとはまったく想像していなかったと明かした後、「馬自身が経験を積んでどんどんステップアップして、しっかりこの結果に結びついた。なかなかこの仕事をしていても、こういう風に上手くいく事はないので感動しています」と述べて、愛馬を称えた。

 2015年にリーディングトレーナーとなったほか、最高勝率調教師を三度受賞するなど、数々のタイトルを手にしてきた堀調教師は、出走数が少ないことで知られる。管理馬の状態を細部までチェックして状態を冷静に把握し、一定の勝算が見込める馬しか使わないのがその理由だとされている。関東きっての名門の厩舎力をまざまざと見せつけた。
 
 豪州を本拠地とするレーン騎手は、2019年に短期騎手免許を取得して日本での騎乗をスタート。リスグラシューとのコンビで宝塚記念、有馬記念、加えて豪州のコックスプレートとGⅠレースを3勝するなど、着々と実績を積み上げて信頼を掴み取った。

 前述した通り、タスティエーラに騎乗するのは今回が初めてで、テン乗りでの日本ダービー制覇は69年ぶりとなる快挙だった。完璧と言えるスムーズな手綱捌きが、今回の勝利に与えた影響は少なくない。

 ソールオリエンスが2着に敗れたのは勝負のアヤ。いわゆる「敗れてなお強し」というレース内容で、皐月賞馬の名に恥じない力を見せたと言っていいだろう。皐月賞のような後方一気の勝ち方は見た目の派手さゆえ、能力が過剰評価されやすい傾向がある。実際にはトップクラスのなかの1頭という評価が妥当だったのではないかと思う。

 横山武史騎手は、一昨年のエフフォーリアに続いての日本ダービー2着という悔しい結果になったが、幾多の名騎手の前にもダービーの壁は立ちはだかった。その壁を破る日はきっと来る。

 3着のハーツコンチェルトは、2着ながら青葉賞で好タイムを叩き出した能力の高さを遺憾なく発揮した。ダッシュが鈍いため後方からの競馬を余儀なくされているのが現状だが、さらに実が入れば、そうした面も解消されていくだろう。背の長いすらりとした体形は、いかにも長距離に向きそう。秋シーズンを期待して待ちたい。

 最後に、スキルヴィングの冥福を祈る。合掌。

文●三好達彦

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