バレーボール

バレーVリーグが新リーグに向け本格スタート。発想の転換と丁寧な説明で、脱退の動きも終息化

北野正樹

2023.07.11

國分裕之・Vリーグ機構会長 写真:北野正樹

 日本バレーボールリーグ機構(Vリーグ)は、6月21日の理事会で、2024-25年シーズンから始まる世界最高峰を目指す「SVリーグ」と、地域共生を重視するリーグ地域に密着した「Vリーグ」の参入要件を示す「クラブライセンス交付規則」を承認、新しいリーグに向け本格スタートを切った。

「多様性を認めるという意味で、運営方法はいろいろあっていいと思っています。プロ化も一つの手段ではありますが、今の段階ではすべてのチームがプロである必要はないと思います。我々が考えているファンファーストの魅力あるリーグにするにはどういう方向に向かっていけばよいのか。各チームと話し合いをして、賛同できる部分を見つけ出していきたいと思います」

 2021年4月21日の会長就任時に、リーグのプロ化についての質問について答えた國分(くにぶ)裕之会長(全日空商事社長)の言葉だ。
 
 それから791日。紆余曲折を経て、新リーグ構想がようやく動き出した。

 構想が明らかになったのは、22年10月11日に開かれた「記者懇談会」と名付けられたオンライン会見だった。

 國分会長が「策定中の中期計画を年内に発表したい」としたうえで、「プロリーグの定義は出来ていないが、どういう形がいいのか、いろんな可能性を探り、2024-25年シーズンから新しいリーグで行いたい」と明らかにし、年内に発表することも付け加えた。
実は、この段階で各チームには新リーグ構想の概要が示され、すでに大きな波紋が広がっていた。

 大きなものは2つ。

 1つ目は世界を目指すトップリーグの年間の「売上高」は当初4億円、数年後には6億円を想定し、企業チームにはバレー部が分社化(法人化)して会社から自立し、独立採算で収益を上げていくことだった。

「売上高」とは、入場料収入やグッズ販売などの一般的な売り上げとは違い、企業チームでは本社からのバレー部に対する広告宣伝費、福利厚生費、人件費や入場料収入などを含めたもので、ほとんどのV1チームは年間4億円の運営費を使っており、問題は大きくなかった。

 ネックになったのが、バレー部の分社化だった。企業チームの中で、男子のパナソニックやウルフドッグス名古屋、女子の久光などは独立採算で事業化を目指し分社化を進めていたが、一部の企業は「法人化の議論以前に、会社がバレーで収益を上げることを考えていない」として、難色を示した。

 また、SVリーグを目指すV2のチームの中には、母体の規模から「スポンサー料などで4億円はとても集まらない」という声も上がった。
 
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