10月22日、牡馬3歳クラシック三冠の最終戦となる第84回菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)が行なわれ、単勝4番人気のドゥレッツァ(美浦・尾関知人厩舎)が直線で一気に抜け出し、ダービー馬で単勝2番人気のタスティエーラ(美浦・堀宣行厩舎)に3馬身半差を付けて圧勝。重賞初勝利をGⅠレースで挙げる快挙を成し遂げた。3着には1番人気のソールオリエンス(美浦・手塚貴久厩舎)が入り、上位を関東勢が独占する結果となった。
衝撃の圧勝劇だった。デビュー2戦目から前走の日本海ステークスまで4連勝を飾っているとはいえ、これはすべて条件戦。ダービー馬、皐月賞馬をはじめ、重賞ウィナーが目白押しのメンバーのなか、単勝4番人気に推されたとはいえ、彼の能力がどこまで通用するのかは未知数というしかなかった。
しかしフタを開けてみれば、タスティエーラ以下の強者たちをまったく相手にしないワンサイドゲームの圧勝。レース後、上位に入った馬のジョッキーたちは、「今日は相手が強すぎた」と口を揃えるほど、底知れぬポテンシャルに舌を巻いた。
今回のドゥレッツァの勝利には、彼自身の能力の高さはもちろんとして、その他にも二つのポイントがあったと筆者は考えている。
ひとつ目は、レース間隔を十分に取りながら、ドゥレッツァを大切に使ってきたトレーナーと牧場による「我慢」の育成だ。昨年9月のデビュー戦を3着に敗れると、約2か月待って11月の未勝利戦(東京・芝2000m)では出遅れながらも上がり3ハロン33秒4という爆発的な末脚の切れ味を発揮して初勝利を挙げる。ちなみに、このレースの2着はのちに重賞2勝を挙げるサトノグランツだ。
翌年は1月のセントポーリア賞(1勝クラス・芝1800m)から始動予定も、直前に蹄の不安が出たため出走を回避。しかし一頓座あったものの、復帰戦となった4月の山吹賞(1勝クラス、中山・芝2200m)を完勝した。
続く6月の香港ジョッキークラブトロフィー(2勝クラス、東京・芝2000m)を制すと、8月の日本海ステークス(3勝クラス、新潟・芝2200m)も快勝。復帰してからの3戦はそれぞれレース間隔を2か月ずつとって、ゆったりしたローテーションで本番へ向かったことがよく分かる。これにはすっぱりと春のクラシックを諦めて、地道に力を付けさせた陣営の決断の見事さを感じる。
もうひとつは、クリストフ・ルメール騎手のファンタスティックとしか言いようがない見事な騎乗である。
同騎手が「1周目は静かな騎乗をしたかったのですが、馬がとても元気で、すぐ前の方に行ったので逃げた方がいいと思い、ハナを切る(先頭に出る)判断をしました」とレース後に語ったように、ドゥレッツァは大外17番枠から絶好のタイミングでゲートを飛び出すと、馬群の外からぐんぐんと位置を上げ、結局先頭に立ってしまった。3000mある長丁場のGⅠ戦。京都のスタンドがざわついたのも当然で、筆者も含め多くのファンには、この戦法が「奇策」にしか映らなかったと思う。
しかし、ここで思い出してほしい。奇策に見えた戦法は、6年前の日本ダービーでルメール騎手が、レイデオロで勝利を手繰り寄せるために繰り出した渾身の策だ。馬なりでゲートを出て後方を進んだレイデオロだが、レースが超スローで流れているのを察知した同騎手は向正面でするすると位置を上げて、第3コーナー付近では2番手に付けて折り合わせていたのである。
この「道中に動いて、好位置で折り合わせる」という騎乗は、馬が引っ掛かって暴走するリスクと背中合わせの難しい技術である。ゆえに道中で積極的に動こうとする騎手は極めて少ない。現役でその芸当ができる騎手の最初に指を折るべきは、ルメール騎手を置いて他にいないのだ。
衝撃の圧勝劇だった。デビュー2戦目から前走の日本海ステークスまで4連勝を飾っているとはいえ、これはすべて条件戦。ダービー馬、皐月賞馬をはじめ、重賞ウィナーが目白押しのメンバーのなか、単勝4番人気に推されたとはいえ、彼の能力がどこまで通用するのかは未知数というしかなかった。
しかしフタを開けてみれば、タスティエーラ以下の強者たちをまったく相手にしないワンサイドゲームの圧勝。レース後、上位に入った馬のジョッキーたちは、「今日は相手が強すぎた」と口を揃えるほど、底知れぬポテンシャルに舌を巻いた。
今回のドゥレッツァの勝利には、彼自身の能力の高さはもちろんとして、その他にも二つのポイントがあったと筆者は考えている。
ひとつ目は、レース間隔を十分に取りながら、ドゥレッツァを大切に使ってきたトレーナーと牧場による「我慢」の育成だ。昨年9月のデビュー戦を3着に敗れると、約2か月待って11月の未勝利戦(東京・芝2000m)では出遅れながらも上がり3ハロン33秒4という爆発的な末脚の切れ味を発揮して初勝利を挙げる。ちなみに、このレースの2着はのちに重賞2勝を挙げるサトノグランツだ。
翌年は1月のセントポーリア賞(1勝クラス・芝1800m)から始動予定も、直前に蹄の不安が出たため出走を回避。しかし一頓座あったものの、復帰戦となった4月の山吹賞(1勝クラス、中山・芝2200m)を完勝した。
続く6月の香港ジョッキークラブトロフィー(2勝クラス、東京・芝2000m)を制すと、8月の日本海ステークス(3勝クラス、新潟・芝2200m)も快勝。復帰してからの3戦はそれぞれレース間隔を2か月ずつとって、ゆったりしたローテーションで本番へ向かったことがよく分かる。これにはすっぱりと春のクラシックを諦めて、地道に力を付けさせた陣営の決断の見事さを感じる。
もうひとつは、クリストフ・ルメール騎手のファンタスティックとしか言いようがない見事な騎乗である。
同騎手が「1周目は静かな騎乗をしたかったのですが、馬がとても元気で、すぐ前の方に行ったので逃げた方がいいと思い、ハナを切る(先頭に出る)判断をしました」とレース後に語ったように、ドゥレッツァは大外17番枠から絶好のタイミングでゲートを飛び出すと、馬群の外からぐんぐんと位置を上げ、結局先頭に立ってしまった。3000mある長丁場のGⅠ戦。京都のスタンドがざわついたのも当然で、筆者も含め多くのファンには、この戦法が「奇策」にしか映らなかったと思う。
しかし、ここで思い出してほしい。奇策に見えた戦法は、6年前の日本ダービーでルメール騎手が、レイデオロで勝利を手繰り寄せるために繰り出した渾身の策だ。馬なりでゲートを出て後方を進んだレイデオロだが、レースが超スローで流れているのを察知した同騎手は向正面でするすると位置を上げて、第3コーナー付近では2番手に付けて折り合わせていたのである。
この「道中に動いて、好位置で折り合わせる」という騎乗は、馬が引っ掛かって暴走するリスクと背中合わせの難しい技術である。ゆえに道中で積極的に動こうとする騎手は極めて少ない。現役でその芸当ができる騎手の最初に指を折るべきは、ルメール騎手を置いて他にいないのだ。
関連記事
- 「日本の名牝の仲間入り」史上7頭目の牝馬三冠リバティアイランドに米専門メディアが熱視線! 圧巻の快勝劇に驚嘆「なんて強さだ!」
- 三冠牝馬リバティアイランドは”現在の日本競馬”を象徴するアイコン! 驚異的な鬼脚見せたマスクトディーヴァは化ける可能性も【秋華賞】
- 【名馬列伝】“白い稲妻”の如く怒涛の連勝街道で頂点を掴んだタマモクロス。1歳違いの「芦毛の怪物」と運命の交錯へ<前編>
- 【名馬列伝】35年前、3度実現した至極の“芦毛対決”。タマモクロスvsオグリキャップは師走の中山を別世界に変えた<後編>
- 【名馬列伝】大差で突き放す異次元の強さ。“持込馬”であるマルゼンスキーが『史上最強』と主張される理由