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マラソン・駅伝

「雨をデザートのように食べていた」――“大逃げ”で大健闘4位の川内優輝!レジェンド瀬古利彦が一発選考に必要な考え方を伝授!

永野祐吏(THE DIGEST編集部)

2023.10.28

川内(右)の魂のこもった走りを瀬古利彦氏(左)も称える。写真:金子拓弥、梅月智史(THE DIGEST写真部)

川内(右)の魂のこもった走りを瀬古利彦氏(左)も称える。写真:金子拓弥、梅月智史(THE DIGEST写真部)

 10月15日に開催された、パリ五輪のマラソン日本代表選考レース『マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)』で、お茶の間を賑わす快走劇を見せたのが川内優輝(AD損保)だ。

 一発勝負の大舞台で川内はスタートから飛び出すと、一気に独走態勢を築いた。35キロ過ぎに2位集団に吸収されたものの、プロ根性で粘りを見せる。1人ずつ集団から脱落していくなか、最後まで五輪切符争いに絡み、小山直城(Honda)、赤﨑暁(九電工)、大迫傑(Nike)に次いで、4位・2時間9分18秒でフィニッシュした。

 同大会が130回目のレースとなった鉄人にとって、“悪条件”は得意中の得意。2018年1月の『マーシュフィールド・ニューイヤーズデイ・マラソン』で気温マイナス17度という過酷な環境で2時間20分切りを達成すると、同年4月の『ボストンマラソン』では、気温3度の寒さと風雨をものともせず、世界最古の大会を制している。

 そんな彼にとって有利なコンディションだったと見るのは、マラソン解説者の瀬古利彦氏だ。「これまでの成功体験が大きい」と分析すると、“瀬古節”で川内の走りを称えた。

「雨をデザートのように食べている感じがした」

 正解のない勝負の駆け引きのなか、己の走りを貫き通した36歳は、“川内劇場”と言わしめるほどのしたたかなレース展開を我々の脳裏に焼きつけた。これに瀬古氏は、「彼は人を迷わせる、突拍子もないことをするのが勝ちパターン」と自分の土俵に持ち込めていたといい、35キロ以降の気迫のこもった走りに対して「あれは凄いと思った。集団でうまく休んで、もう一回仕掛けようとしていたよね。120点の出来だった」と称えている。
 
 貪欲に勝負を追求し、最後の最後に華麗なるスパートでライバルを置き去りにすることでも知られる瀬古氏。そんなレジェンドが仮に現役であったら、どの様に対処していたのか――。筆者は尋ねてみた。

 すると、「MGCは2位以内に入ればいいから、なるべく競技場の近くまで来て...」と確実に2枠目を仕留める考えを明かしたうえで、「誰かが出るのを辛抱しながら走る。いわゆる赤﨑選手や小山選手と同じかな。大迫選手のように29キロでは出ないと思う。スピードには自信があるので、ライバルに逃げられても2番に入れる可能性は十分にある」と自身のプランを紹介しながらも、大迫を警戒した。

「スピードがある大迫選手が同じ集団にいたら、3番になるかもしれないと焦るよね。メンバー次第で考え方は変わるけど、それでも競技場の近くでスパートをかけるのが、私のやり方。自分の一番の勝ちパターンは、しっかり守る。それで負けたらしょうがない」

 そして川内と現役時代の自分を重ね合わせた瀬古氏は、「やっぱり勝ちパターンってあるじゃないですか。そこへいかに持っていけるかですよね」と一発勝負の舞台で必要な考え方を伝えた。

取材・文●永野祐吏(THE DIGEST編集部)

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