フィギュア

2人のディフェンディングチャンピオンを擁する男女シングル日本代表。世界選手権で”再び”頂点を目指す【フィギュア】

沢田聡子

2023.12.30

全日本選手権を制した宇野(左)と坂本(右)。世界王者として連覇を目指す。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 男子、女子ともにディフェンディングチャンピオンを擁する日本勢が、来年3月の世界選手権(カナダ・モントリオール)に臨む。

 世界選手権の代表最終選考会を兼ねたフィギュアスケートの全日本選手権が12月21日から24日まで長野・ビッグハットで行なわれた。その結果を受けて、世界選手権の代表選手が発表された。シングルについては、男子は宇野昌磨・鍵山優真・三浦佳生。女子は坂本花織・千葉百音・吉田陽菜が選ばれた。

 代表記者会見で、昨シーズン世界選手権で連覇を果たした宇野は3連覇へのモチベーションについて問われ、「順当にいけば、僕は優勝できないと思っているので」と冷静に答えている。

「本当に、僕が今までで最高の演技をしなければ優勝はないと思っているので。3連覇ということに重圧を感じている場合ではまったくないかなというのは、自分の実力からして考えているので、それこそ最善を尽くすということだけを考えて、調整や試合に臨みたいなと思っています」

 宇野は、イリア・マリニン(アメリカ)を念頭に置いてこの発言をしたものと思われる。

 昨季4回転アクセルを人類史上初めて成功させたマリニンは、プログラムを通して高難度ジャンプを安定して跳ぶ力を身につけた今季、12月のグランプリ(GP)ファイナルで遂に世界の頂点に立った。ジャンプだけでなくスピンにも長け、表現面でも成長が見られるマリニンについて、宇野はいつか世界トップに君臨すると予言していたが、その時は既にやってきたともいえる。
 
 ただ、ジャンプにおいてマリニンが他の追随を許さないように、表現面も含めたプログラムの完成度において、宇野は頭ひとつ抜けている。表現に注力するとして迎えた今季、宇野はショート・フリー共に作品として非常に優れたプログラムを滑っている。宇野の演技については各要素を取り上げて評するだけでは充分ではなく、プログラムが終わった時の余韻こそが彼の実力を示すものだ。

 宇野は昨季まで試合で跳んでいた4回転サルコウを、今季は構成に入れていない。会見で宇野は世界選手権に向けて4回転サルコウを練習し、状況に応じて組み込むか否かを決める意向を明かしたうえで、次のように語っている。

「いま跳べているジャンプをより綺麗に跳ぶということが、僕は最初にやらなければいけないことかなと思うので、まずは目の前のことを一歩一歩やっていこうかなと思っています」

 今季の宇野はジャンプの回転不足をとられることが多く、その克服も世界選手権に向けての課題となる。ショート・フリーを完璧に揃えれば、世界一の演技構成点を持つ宇野はマリニンと互角に渡り合えるはずだ。
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全日本2位の鍵山優真は構成を上げる意欲を示す