ラグビー

BL東京を開幕7連勝に導く小柄なNZ代表司令塔。「ラグビーはどんな体型でもできる」と語る名手の“頭の中の画”とは?

向風見也

2024.03.02

BL東京の開幕7連勝に貢献するモウンガ。(C) Getty Images

 攻めるほうは「裏」だけを見ていた。そこに盲点があった。

 2月24日、東京・秩父宮ラグビー場。国内リーグワン1部・第7節に出ていた横浜キヤノンイーグルスの山菅一史は、後半19分、敵陣22メートル線付近右の接点からキックを試みた。背負っていた15点のビハインドを縮めるべく、防御の「裏」に視線を送った。

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 相手が悪かった。弾道は、ちょうど目の前にいたリッチー・モウンガに当たった。対する東芝ブレイブルーパス東京のスタンドオフは、山菅の動きを見切ってチャージ。ルーズボールを拾い、走り切った。追加点が決まった。22―0。

 山菅にとっては、視界の手前に邪魔が入った格好。走られた側が「嗅覚、あるっすね」とうなだれる傍ら、走った側は潤んだ目を細める。

「かなり疲れていた。追いつかれるかなと思いながら、必死に走っていました。最後はなんとか逃げ切れてよかったです」

 ブレイブルーパスが27―7で勝利。2003年のトップリーグ開設から5度の日本一に輝く古豪にとって、2008年度以来の開幕7連勝となる。

 けん引役はモウンガだ。ラグビー王国ニュージーランドの代表司令塔として昨秋までに2度のワールドカップに出た29歳は、来日1シーズン目にあって出色の働きを披露する。身長176センチ、体重83キロの身体を左右に駆動させ、絶妙なポジショニングから敵の虚をつく。

 この日も前半11分、中盤でパスをするそぶりを交えて突破。快足を飛ばした。自身の左へ並ぶ守備網がせり上がるのを見切り、入れ違いのような形で抜けた。

「イーグルスが(ディフェンスの)ラインスピードを上げるチームだというのは事前にわかっていた。(自身の)外側に立つ人が上ってくる時、その間(死角)を狙おうと思っていた」

 事前の予習が効いたのは続く16分も然りだ。自陣中盤左の接点から球を受けると、一歩、前に出て、目の前に並ぶ3名のタックラーの視線を寄せる。刹那、右大外の区画を狙った。右足で楕円球を浮かせた。

 このスペースへは、味方ウイングの桑山淳生が駆け込んでいた。クリーンキャッチからの力走で、インサイドセンターのニコラス・マクカランにフィニッシュさせた。モウンガは頷く。

「エッジ(タッチライン際)にスペースが生まれるという分析もしていました。その『画』にのっとって(試合までの)1 週間、準備してきた。自分が独自の判断でキックしたというより、キャッチした選手も含むチーム全員で『画』を共有できていた」
 
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「身体は大きくなくてもでっかいハートを持った次世代の選手たちに、示したいんです」