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「メニューにはCO2排出量と動物福祉の観点から…」米メディアが“大会の問題点”を指摘「思惑は次々と裏目に」「競技に影響を与えている」【パリ五輪】

THE DIGEST編集部

2024.07.29

食堂の料理不足問題は、たびたびメディアを賑わせている。(C)Getty Images

食堂の料理不足問題は、たびたびメディアを賑わせている。(C)Getty Images

 米メディア『FOX Sports』が7月29日、パリ五輪を巡るさまざまな問題点を指摘した。とりわけ食や環境に関する部分で、アスリートから不満の声が挙がっていると伝えている。その根本には、大会組織員会の理念があるようだ。

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「組織委員会は、パリ五輪をこれまでで最も環境に配慮した大会にしようと積極的に取り組み、これを世界に誇らしく宣伝している。一部の専門家は、組織委員会の取り組みがやり過ぎで、五輪全体を“グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)”していると非難した。この騒動に巻き込まれているのは、五輪で競技をする約1万人の選手たちだ」

 こう指摘した同メディアは、これまで選手から苦情が出た事例として、食堂の料理不足、段ボールベッド、トレーニング会場や競技場に向かう輸送システムの不備で選手が取り残された点を挙げた。

「オーストラリア選手団の役員は、組織委員会の環境政策が選手たちにどのような影響を与えるのかを事前に予測。独自にエアコンを持ち込み、専属シェフやバリスタ、さらに自国の生活必需品を持ち込んだ」

 オーストラリアのような対策をとっていなかった代表団や選手たちからは不満の声が挙がった。英国代表団は急遽自国から専属シェフをパリに呼び寄せ、米国のテニス選手ココ・ガウフは、何人かのチームメイトが別の宿泊施設を求めて選手村から去っていったことを明かしている。ガウフは「10人の女子と、2つのバスルーム」とSNSに記して問題提起していた。

 食に関しては、「提供される料理の選択肢は、ビーガン食が主流だと広く報道されている」とし、オーストラリアの元競泳選手で、2012年のロンドン五輪・100メートル自由形で銀メダルを、16年のリオデジャネイロ五輪・4×100mメドレーリレーで銅メダルを獲得したジェームズ・マグヌッセンが挙げた、次のような不満の声を紹介している。

「今回の五輪は世界記録を生み出すには最も厳しい環境かもしれない。選手村の食事環境は、パフォーマンスや健康を阻害する可能性がある。実際に多くの選手が不満を表わした。主催者は選手のパフォーマンスではなく、環境への配慮、CO2排出量の削減、ビーガン食を優先しているようだ。開会式の前日には肉料理や乳製品料理が不足した。多くの選手がビーガン食よりも肉や乳製品を選ぶと予想できなかった。調理運営業者は不足した食品の量を増やしたようだが、ワールドクラスのアスリートはビーガン食を取っていないんだ」
 
 マグヌッセンはさらに、「環境優先の理念は、政治的スタンスなのか、コスト重視のスタンスなのか分からない。しかし五輪は世界最高のスポーツイベント。将来的には別の選択肢を検討する必要があるだろう」と私見を述べている。

 また同メディアは、開会前に選手村の総料理長チャールズ・ギロイ氏が語ったコメントも紹介。ギロイ氏は、「メニューにはCO2排出量と動物福祉が配慮されている。揚げ物を作るフライヤーは火災の危険性が懸念されるため、フライドポテトを作るのはリスクが高い。フォアグラは動物福祉の考えから提供しない。アボカドは遠方から輸入され、しかも大量の水を消費するので使用しない」と語っていた。その後、組織委員会は食事に関する懸念を一蹴。選手村では500種類の料理が用意され、約200か国の選手の要望に十分応えると表明していた。

 それでもアスリートは選手村に不満を抱えている。女子400メートル自由形で金メダルを獲得したオーストラリアのアリアーン・ティトマスは、「金メダルを獲得できたけど、自分のタイムの遅さに愕然とした」と語っており、その一因として五輪を取り巻く環境がパフォーマンスに影響を与えていると話している。

 組織委員会は、CO2排出量を158万トン未満にするという野心的な目標を掲げている。12年のロンドン大会や16年のリオデジャネイロ大会との比較で、約半分の排出量に相当する量だ。持続可能をうたう組織委員会は、五輪開催に向けて新規の建物建設を最小限に抑えた。競技会場の95パーセントは既存の建物、あるいは仮設の施設となっている。

 しかし、同メディアは「環境配慮をうたってセーヌ川の浄化に10億ドル(約1500億円)を費やしながら、深刻な汚染のためにトライアスロン選手のトレーニングセッションを2日連続で中止した。いまでは選手の健康配慮の観点から、競技実施が可能なのか疑問が生じている」と記載。組織委員会の思惑が、次々と裏目に出ている現状を指摘した。

構成●THE DIGEST編集部

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