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【名馬列伝】稀代の“貴婦人”ジェンティルドンナ。三冠馬オルフェーヴルに臆さない闘志、有終の美を飾った有馬記念…最強牡馬たちとの激闘譜<後編>

三好達彦

2024.09.03

第32回ジャパンCでオルフェーヴル(左)と激烈な叩き合いをハナ差で制したジェンティルドンナ(右)。写真:産経新聞社

第32回ジャパンCでオルフェーヴル(左)と激烈な叩き合いをハナ差で制したジェンティルドンナ(右)。写真:産経新聞社

 2012年に史上4頭目の牝馬三冠を達成し、エリザベス女王杯(GⅠ)ではなく、古馬牡馬との対戦となるジャパンカップ(GⅠ)を選んだジェンティルドンナ。フォワ賞(仏・GⅡ)を制し、凱旋門賞(仏・G1)で”あわや”のシーンを作った2011年の三冠馬オルフェーヴル(オッズ2.0倍)、春にクイーン・エリザベスⅡ世カップ(香港・G1)でビッグタイトルを初めて手にしたルーラーシップ(オッズ5.4倍)の2頭にこそ支持率で先んじられたが、それに次ぐ単勝3番人気(オッズ6.6倍)の3番人気に推されて、彼女はゲートに入った。

 このレースが、のちに物議を醸す”激しすぎる戦い”となる。

 逃げを打ったのは春の天皇賞(GⅠ)を制したビートブラックで、向正面からはピッチを上げて大逃げの態勢に持ち込む。ジェンティルドンナは好スタートから離れた2番手を進み、後方で構えていたオルフェーヴルも第3コーナーから徐々に位置を押し上げて3番手で最終コーナーを回る。そして迎えた直線。先に仕掛けたのはオルフェーヴルで、ビートブラックに並びかけていくと、そこへ内からジェンティルドンナも差し争いに加わる。

 しかし、ビートブラックとオルフェーヴルの間が狭くなり、進路がふさがったジェンティルドンナは前の2頭の間に馬体をねじ込むようにして、強引に進路を確保した。そのとき、オルフェーヴルは2度、3度とジェンティルドンナに馬体をぶつけられて体勢を崩しかけたが、こちらも強者。2頭は後続を突き放して150mほど激烈な叩き合いを繰り広げるがお互い譲らず、馬体を併せた状態でゴール。写真判定の末、ハナ差先んじたジェンティルドンナに軍配が上がった。3歳牝馬の優勝はジャパンカップ史上初の快挙となった。
 
 だがレース後、直線でジェンティルドンナの進路の取り方が審議の対象となり、降着こそなかったものの、手綱をとった岩田康誠は2日間の騎乗停止処分を受けた。オルフェーヴル陣営からは「納得がいかない」という不満の声が聞かれ、ファンからも「あれは降着が妥当だったのでは」という声が多数上がった。

 この件に関する賛否について、筆者は判断する立場にはない。しかし、これだけ激しいレースとなりながら、馬体をぶつけたジェンティルドンナも、ぶつけられたオルフェーヴルも戦意を失わず、2頭が最後まで死闘を演じ切ったことに身震いするような感動を覚えたのは確かだ。

 この年は7戦6勝、「牝馬三冠」「ジャパンカップ」という極めて優秀な成績を収めたジェンティルドンナはJRA賞で最優秀3歳牝馬、年度代表馬のタイトルを手にした。
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