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歴史に残る死闘制し、26年ミラノ五輪出場の夢つないだフォルティウス。スポンサーゼロ、貯金切り崩す苦難を支えた“強い覚悟”「いつか笑える日が来る…」

湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

2025.02.11

日本選手権を制したフォルティウス。スポンサーゼロの苦難を乗り越えて頂点を掴んだ。(C)JCA/H.IDE

日本選手権を制したフォルティウス。スポンサーゼロの苦難を乗り越えて頂点を掴んだ。(C)JCA/H.IDE

 2月9日、カーリングの日本選手権は女子の決勝が行なわれ、フォルティウスが延長戦の末に北海道銀行を8対7で競り勝ち、頂点に立った。3月に韓国で開幕する世界選手権の代表切符を掴むとともに、9月に実施予定の2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪代表候補決定戦の出場権を掴んだ。
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 一進一退の緊迫する攻防は10エンドを終えて7対7の同点のまま、エキストラ・エンドに突入した。直後の第11エンド、フォルティウスのウイニングショットが決まった瞬間、普段は冷静沈着なカーラーの表情が一瞬にして崩れた。33歳のスキップ吉村紗也香は「最後は自分の感覚を信じて、思い切って投げました。この場に立てて楽しかったです」と語り、苦楽を共にしたチームメイトと肩を組んで歓喜を分かち合うと目元から涙がこぼれ落ちた。

 決勝で対峙した北海道銀行とは、決して小さくない因縁がある。2010年にチームが結成されたフォルティウスは、当時スポンサーだった北海道銀行の名を冠に翌年から「北海道銀行フォルティウス」として活動した。14年にはソチ五輪5位に入賞するほど、国内屈指の実力集団だったが、五輪出場を2大会連続で逃すと北海道銀行との契約が打ち切りに。スポンサーもない状況から新体制での再出発を余儀なくされた。

 吉村は当時を振り返りながら、「最初はスポンサーもゼロで所属先もなかった。7か月くらいは自分の貯金を切り崩しながら」と明かし、一番苦しかった時期だった。さらに23年7月頃には、カナダ遠征の活動資金を捻出するためにクラウドファンディングを実施。「ファンの方にお願いしていいのかな?」と葛藤もあったが、より競技への思いが強まり、支援してくれたファンへ恩返しの気持ちも高まった。
 
 自身初のオリンピック出場へ並々ならぬ決意で臨んだ今大会は、一番輝くメダルをみせたい人がいる。吉村は2020年に結婚し、23年12月に第1子となる長男を出産。休養期間をはさみ、昨年から氷上に復帰した。

 大会期間中は出産前と変わらず正確無比なショットを連発。ラインを冷静に読み切り、チームの絶対的司令塔として際立つ活躍ぶりだった。競技と子育ての両立に不安な時期もあったというが、「出産を経験して、メンタルの面が以前よりも冷静でいる自分はいるなという感覚がある。今の自分は好きですね」と笑顔で答え、最愛の息子には「メダルをかけてあげたい」と母親としての顔をのぞかせた。

 歴史に残る死闘を制し、出場権を掴んだフォルティウスは代表候補決定戦で昨年の女王・SC軽井沢クラブ、今大会3位のロコ・ソラーレと対戦する。吉村は2次リーグ最終戦を終えたあと、凛とした表情で次のようなコメントを残している。

「自分たちもオリンピックに出て、金メダルを取るという強い思いがありました。本当にゼロからのスタートで、一人ひとりが強い覚悟を持ってそういう道に進んできた。最初はどうなるか分からなかったけど、いつか笑える日が来るんだろうな...という気持ちでやってきている」

 チーム名のフォルティウスは、ラテン語で「より強く」の意味を持つ。家族を持ち、精神的にもたくましさを増したママさんカーラーはチーム一丸で三つ巴の戦いを制し、大舞台の切符を今度こそ掴んでみせる。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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