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マラソン・駅伝

“中長距離の新エース”田中希実が目指すものとは?飛躍の2020年から五輪を展望する

寺田辰朗

2021.01.23

●800mから10000mまで、それぞれの種目への思い

 それぞれの種目における自身の現状認識を田中が、1月21日のアスレティック・アワード優秀選手賞受賞の際に話してくれた。種目ごとの実績と一緒に紹介していきたい。

 3000mは18年のU20世界陸上で金メダルを獲得した種目で、「一番の得意種目」と自身では感じている。

「レース中の力の調節がしやすい距離なんです。頭も使いながらレースをコントロールできて、ラストスパートも5000mよりその感覚を得やすい種目ですね」

 1500mは中学3年時(14年)の全日本中学選手権で優勝し、自身初の全国タイトルを取った種目である。田中と同じ兵庫県小野市出身で、以前から親交のあった小林祐梨子が日本記録を持っていたこともあり、日本記録更新への思いも強かった。

「結構好きな種目です。5000mで世界と戦う上でも、速いスピードやレース中の揺さぶりに対応するための“スピード持久力”をつけることができます」

 800mは中学1年で全国大会を初めて経験した種目(ジュニアオリンピック6位)。その後は徐々に1500m、3000mが中心になっていくが、この種目でも昨年7月に2分04秒66の兵庫県記録をマークした。10月の日本選手権でも2分04秒76の4位。7月は3000m日本新の4日後で、10月は1500m日本選手権優勝の2日後という強行スケジュールのなかで走っている。

「800mは絶対スピードを上げることができる種目です。スピード持久力を発揮する局面で、そのスピードを楽に出すことができますし、維持することも楽になります」

 5000mは19年ドーハ世界陸上で14位(15分00秒01=当時日本歴代2位)となり、先月の日本選手権で東京五輪代表も決めた種目。廣中に苦戦したとはいえ、世界のトップに最も近づいている。

「世界に一番近いというか、もっと戦っていけるようになりたい種目です」
 
 そして10000mだが、今月17日の京都女子駅伝中・長距離競技会に31分59秒89で優勝した。2年ぶり2度目の10000m出場で、日本選手権参加標準記録を突破。今年5月の五輪選考レースへの出場資格を得た。

 だが記録的には、昨年の日本リスト10位にも入らない。田中本人も「脚の持久力というより、精神的な持久力をつけることにはなりましたが、5000mにつながるスタミナになっているかは疑問です」と自己評価は低い。

 以上のように、田中は多くの種目で過去の実績があり、強い思いをそれぞれの種目に対して持っている。そして父親である田中健智コーチがその思いを理解し、次の試合のための練習を行ないながらも、その先に出場する種目も意識した練習メニューを組んでいる。

 また以前の取材では「かつて戦っていた種目で弱くなっていると、その種目の選手たちに思われたくないんです」と話していた。中高生の頃の「負けたくない」という純粋な気持ちを持ち続けた結果、一度に多くの種目に挑戦する選手が誕生した。
 

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