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【名馬列伝】忘れ得ぬ「ゴルシ伝説」――我が道を貫いた“異能の天才“ゴールドシップが今でも愛される理由

三好達彦

2021.05.01

 歳を重ねるごとにメンタルの問題が表面化したゴールドシップのことを振り返って、管理調教師の須貝尚介は「共同通信杯の前から気性の難しさが出るようになって、特に最後の年(2015年)は気が休まることがなかった」と、その苦闘について述懐している。

 ゴールドシップの走りでみな一様に思い出すのが、3コーナー付近で後方から位置を押し上げて、一気にゴールまで駆け抜ける「ロングスパート」だろう。それを最初に披露した皐月賞(GⅠ)は特に鮮烈なインパクトを与えた。

 いつもどおりにゆったりとゲートを出たゴールドシップは、ハイペースの展開になったこともあって、馬群のほぼ最後方からレースを進める。そして3コーナーから馬場の内めを通って進出を開始すると、前日の雨の影響で馬場状態が悪く、他の馬たちが避けたためにポッカリと空いた内ラチ沿いのスペースを強襲。一気に先団に取り付くと、徐々に馬場の半ばへ進路を変えながら力強く先頭に躍り出て圧勝。あえて馬場が傷んだ内ラチ沿いを横切るようにして突き抜けた常識破りのコース取りと、600m以上に渡って鈍ることなく繰り出される強靭な末脚にファンも関係者も揃って驚嘆した。そしてこのレースを境に、破天荒な「ロングスパート」はゴールドシップの代名詞になっていった。
 
 また、ゴールドシップが走ったレースのなかで、悪い意味で記憶に残る一番のレースは、2015年の宝塚記念(GⅠ)で異論はないだろう。

 徐々にゲート入りを嫌がることが増えるようになっていたゴールドシップは、前走の天皇賞(春)で数分間に渡ってゲートに入ろうとせず、最後は目隠しを装着されてようやく収まるというやんちゃな振る舞いを見せる。結果としてこのレースは優勝を果たすが、ゲート入りに問題があった馬に課される「発走調教再審査」のペナルティを受けていた。

 その再審査には一発で合格したが、JRA史上初の同一平地GⅠ競走3連覇という偉業達成に向け、単勝オッズ1.9倍という圧倒的な支持を受けて出走した宝塚記念で、ついに大ポカをやらかしてしまう。

 ゲートには比較的スムースに収まったものの、隣の枠にいた馬が煩く動き続けるのにイライラをつのらせたゴールドシップは、ゲートが開いた瞬間にグワッと立ち上がって大きく出遅れる。どよめくファンの前でようやくスタートを始めた時、馬群はすでに彼の100m以上先を走っていた。タイムロスは数秒あったと言われる記録的な出遅れで、結果、ゴールドシップはブービーの15着に終わってしまった(この時もまた「発走調教再審査」のペナルティを課されている)。
 
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