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【日本ダービーを掘り下げる】激戦を制したシャフリヤール。成長を見込んだ皐月賞回避の決断は称賛に値

三好達彦

2021.05.31

 そして馬群がずらっと横に広がりながら迎えた直線。

 サトノレイナスが先頭に立とうとした瞬間、ようやく前に進路が開いたエフフォーリアが満を持してスパートを開始。力強く先頭に躍り出るが、そこへ内から急襲したのがシャフリヤール。押し切りをはかろうとするエフフォーリアと、死力を尽くして差し切りを狙うシャフリヤールの火花散る競り合いの末、2頭はほとんど馬体を並べてゴール。やや有利に見えたシャフリヤールだったが、確信が持てない福永騎手はウインニングランを避け、ダートコースから引き揚げるほどの接戦だった。しかして写真判定の末、シャフリヤールがハナ差でエフフォーリアを降し、第88代のダービー馬という最高の栄冠に輝いた。

 シャフリヤールは共同通信杯でエフフォーリアの3着に敗れたため、クラシックへの出走を得るため毎日杯に出走。そこで勝利を収めたものの、無理させず成長を促すために皐月賞を回避し、日本ダービー一本に照準を絞って調整が積まれていた。オーナーのサンデーレーシングもだが、思い切ったローテーションを決断した藤原英昭調教師の決断は、いくら称賛されても、され過ぎということはないだろう。さすが現代を代表するトップトレーナーである。
 
 福永祐一騎手は、直線で進路を切り替えるロスがあったことなどを指して「最高の騎乗とは言えない」としながらも、道中で馬の脚を矯めながらラストスパートで素晴らしい爆発力を引き出した技術の高さと読みの深さにはジョッキーとして円熟の域に達したことを感じさせた。

 ダービーを勝ったエイシンフラッシュを天皇賞(秋)制覇に結びつけたように、藤原調教師は愛馬を息長く活躍させることに長けたトレーナーだけに、シャフリヤールにも今後のさらなるタイトル奪取を期待したい。

 22歳という若さながら、腹を括ってインコースで前が開くまでひたすら我慢し、大激戦を繰り広げた横山武史騎手の騎乗も、また苦しい位置に閉じ込められながら最後まで大接戦に持ち込んだエフフォーリアも、皐月賞を制したコンビに相応しい素晴らしいパフォーマンスを示したと言える。やや仕掛けが速かったのではないかという声もあるが、それは結果論に過ぎない。横山騎手にはこの先長い騎手人生にとって重要な経験を経たことは極めて貴重であるし、エフフォーリアの能力の高さもこの先のタイトル奪取を強く予感させるものだった。

 新型コロナウィルスの感染防止の観点から取材制限処置がとられているため、現場での観戦や取材は叶わなかった筆者だが、画面をとおしても手に汗握った今年のダービーは、史上稀に見る名勝負だったと思う。だからこそ余計に現場で観たかったという思いは募る。

文●三好達彦

【関連動画】シャフリヤールとエフフォーリアの大激戦!日本ダービーのJRA公式レース動画はこちら
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