専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
マラソン・駅伝

急転直下の五輪マラソン札幌移転問題。今後もIOCによる「会場変更」が絶対にないとは…

石田英恒

2019.11.08

小池都知事(左端)に伝えられたのは札幌案発表の前日。開催まで1年を切ったところでの変更も考えられない事態だ。(C)Getty Images

小池都知事(左端)に伝えられたのは札幌案発表の前日。開催まで1年を切ったところでの変更も考えられない事態だ。(C)Getty Images

 世界陸上のドーハでの開催には以前から懸念の声があった。国際陸上連盟と現地の組織委員会は、酷暑を避ける対策はできているとしていたが、結果、あれほどの棄権者を出すアクシデントが起きてしまった。

 世界陸上のマラソンで起き、さらに最大のスポーツイベントであるオリンピックのマラソンで同じようなアクシデントに見舞われれば、IOC幹部の責任問題が出てくる。オリンピックのブランドイメージに関わる自体に発展するだろう。

 開催から1年を切った段階で開催地変更を行なうのは基本的にはあり得ないことで、決定の過程も無理やり感が強いが、自分たちの責任問題を回避するために、やむを得ずリスクを拡大解釈した案を採用したと言えなくもない。

 IOCが今回、独断で会場変更を強行できたのは、テレビで見る国内外の視聴者にとって開催地変更は大きな問題ではないからだ。しかも開催地が海外への移転ではなく、同じ日本の東京から札幌への移転である。実際、開催地変更は東京都民にとっては残念なことだが、札幌市民には歓迎ムードになっている。
 
 今回の会場移転に政治的な裏事情はない。しかし、小池都知事の政治力のなさを指摘する声がないわけではない。小池都知事は政権与党ではなく、政権基盤も万全ではないことから、政権基盤は不安定な面がある。それが、IOCが強行に出たことの一因になった可能性がないとは言えないというのだ。

 その証拠として、IOCが開催地変更を組織委員会の森喜朗会長には早め(10月11日)に伝えたのに、小池都知事に伝えられたのがギリギリのタイミング(15日=札幌案発表の16日の前日)だった。また、小池都知事1人が移転反対を唱えるのみで、政界から小池都知事に賛同する声は一切出なかった。

 IOCとしては、日本で移転反対の大合唱が起きることだけは避けたかったはずだ。弱い政権基盤の小池都知事ならば無理を押し通しても大丈夫では、とIOCが考えたとしても不思議ではない。

 そして、4者協議では、「マラソン、競歩以外の会場変更はなし」と決まった。しかし、トライアスロンや馬術の国際競技連盟も、もともと猛暑の東京での開催に不安を持っていたという。マラソン、競歩の会場変更が決まったことで、今後、なぜ、マラソンと競歩だけなのか、科学的根拠はあるのかと他の国際競技連盟から疑問の声が出る可能性はあるだろう。

 IOCの強硬な態度、東京を軽く見る姿勢から推測すると、今後、マラソン、競歩以外の会場変更が起きる可能性が絶対にないとは言い切れないのである。

取材・文●石田英恒

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号