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東京五輪の悪夢から1年――新メンバーで挑む男子400リレーは化学反応を起こせる!? “バトンパス”に不安はない?

生島淳

2022.07.04

 100mでの健闘も期待されるが、坂井もリレーにおける自分の役割を十分に認識している。

「メダル獲得に貢献したいですね。1走は注目される部分ですし、自分の武器であるスタートから中盤にかけての走りで、世界でも通用する1走になれればいいなと考えてます」

 理想としては坂井が好スタートを切り、サニブラウンが加速して上位でレースを進める。そして200mを守備範囲とする小池がコーナリングで持ち味を発揮し、アンカーの若い栁田につなぐ。

 今回のメンバーも個性的で、小池は「まだ27歳ですが、いちばん年齢が上になってしまいました。冷静に、客観的にチームを見ていければ」と語り、最年少で18歳の栁田は「自分はまだ10代なので、若さゆえの勢いだとか、いけいけどんどん的な雰囲気でチームを明るくできれば良いなと思ってます」と話した。
 
 この4人が新しいケミストリーを生むことに期待したいが、不安視されるのは、「新しいメンバーが、お家芸と言われるバトンパスの技術を伝承できるのか?」ということだ。

 この点に関しては、不安はないと思っている。

 私がオリンピック、世界陸上を取材してきた範囲で判断するなら、走力の高いアメリカ、ジャマイカの選手たちは、バトンパスの技術は低く、サブトラックでの練習を見ていても、気軽に楽しむ感じの時さえある。

「速さで勝てる」という自信が彼らにはある。

 日本は、どうか。

 おそらく、日本の学校教育を受けてきた人であれば、バトンパスを経験したことがない人は、ほとんどいないのではないか?

 また、中学、高校の競技会では、あちこちでバトンパスの練習をしている生徒たちを見る。個人の集積である海外勢に対して、日本のリレー、バトンパスへの情熱は、「団体種目」としての性格が濃い。

 今回、出場する選手たちもそうした経験を重ねてきており、「匠の技」は伝承されていくはずだ。ただし、東京オリンピックの時のように、ギリギリを攻めるバトンパスは、常にリスクをはらんでいるのだが――。

 世界陸上オレゴンの男子400mリレーは、日本時間で7月23日の午前10時05分からが予選、そして決勝が24日午前11時50分から行なわれる予定だ。

 新たなメンバーによる、匠の技に期待したい。

取材・文●生島淳

【著者プロフィール】
いくしま・じゅん/1967年気仙沼生まれ。海外ではNBAやMLB、国内ではラグビー、駅伝、野球等、幅広くスポーツを追うジャーナリスト。駅伝関係の著書には『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)、『箱根駅伝』『箱根駅伝 新ブランド校の時代』(ともに幻冬舎新書)、『箱根駅伝 勝利の方程式』『箱根駅伝 勝利の名言』 (ともに講談社+α文庫)など多数ある。
 

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