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【名馬列伝】ついに満場の祝福を受けたライスシャワー、しかし―― 最後の2走に刻まれた「勝利と死」のコントラスト<後編>

三好達彦

2022.07.26

 大阪杯でのメジロマックイーンを目にしたライスシャワー陣営は、その強さにあらためてショックを受ける。そして、通り一遍の稽古では王者は倒せないと悟り、愛馬を限界近くまで追い込むような厳しいトレーニングを課していく。その鬼気迫る様子は、記者たちを心配させるほどだった。

 そしてライスシャワーもスタッフの気迫を感じ取ってか、レースに向かって日々、テンションを上げていく。

 的場は当時のライスシャワーを「馬房に近付くのも怖くなるような迫力で、心身ともにぎりぎりまで研ぎ澄まされていた」と評している。

 レース当日、威風堂々と落ち着き払ったメジロマックイーンに対して、デビュー以来の最少体重である430㎏にまで絞り込まれたライスシャワーは、その小柄な体から周囲を威圧するようなオーラを発し、目には狂気の色さえ滲ませていた。
 
 単勝オッズは、メジロマックイーンが1.6倍で圧倒的な1番人気に推され、ライスシャワーは5.2倍と離された2番人気に甘んじてスタートを迎えた。

 前年の有馬記念を逃げ切ったメジロパーマーがハナに立つと、メジロマックイーンは3~4番手の好位置を取り、ライスシャワーはそれを目前に見られる5~6番手を追走。緩みなくレースは流れ、馬群はペースを上げながら最終コーナーを回る。

 直線へ向くと、バテたメジロパーマーを交わして、メジロマックイーンが難なく先頭に躍り出る。しかしその後ろにはスナイパーの影が迫っていた。ゴーサインを受けたライスシャワーは弾けるように末脚を爆発させると、メジロマックイーンに抵抗する暇を与えず一気に抜き去り、2馬身半もの差を付けてゴールへ飛び込んだ。走破タイムの3分17秒1はJRAレコードだった。

 しかしレース後に競馬場を覆った空気は、前年の菊花賞のそれと似ていた。多くのファンはメジロマックイーンの3連覇が阻止されたことに落胆し、ライスシャワーの勝利を祝福する声は極めて少なかった。

 彼はまたも「ヒール(悪役)」の看板を背負わされたのだった。
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