【驚きの新人賞】駒澤大・伊藤蒼唯（１年）

　往路、復路の完全優勝を果たした駒澤大で唯一、区間賞を獲得したのが新星の伊藤蒼唯だ。今年度の出雲駅伝、全日本大学駅伝では出走していなかったが、当日変更で山下りの６区に抜擢されると、総合優勝に貢献する驚きの走りを見せた。

「緊張とワクワクが半分でスタートした」と言う無名のルーキーは序盤の上り坂でもペースを落とさずに進むと、下り坂でぐんぐんとスピードを上げ、一気に山を駆け下りる。そして、勝負どころの残り３キロ付近。監督車（運営管理車）が後ろにつくと、大八木弘明監督の『男だろ！』という声かけにさらに背中を押しされた。最後は力強く腕を振って、勢いよく小田原中継所に飛び込んだ。30秒差でスタートした２位・中央大との差を17秒広げる快走だった。

　思い返せば、２年前に総合優勝を果たしたときも６区で驚きの区間賞を獲得。３年生で初めて箱根路に臨んだ花崎悠紀が「誰も僕には期待していなかったと思う」という言葉は印象に残っている。またも駒澤大の６区には、思わぬ秘密兵器が潜んでいた。
  【あっぱれ監督賞】中央大・藤原正和監督

　采配の妙が光ったのは、総合２位に導いた中央大の藤原正和監督。前哨戦とも言われる全日本大学駅伝は７位だったものの、箱根路では22年ぶりのトップ３入り。１区から大胆に１年生の溜池一太を起用して流れをつくり、２区には前回１区で区間新で区間賞を獲得した吉居大和を投入。エースの快走でトップに立つと、3区でも中野翔太が１位をキープ。

　駒澤大に４区で先頭こそ譲ったものの、勢いは衰えることはなかった。復路では６区の若林陽大、7区の千守倫央、８区の中澤雄大と４年生が粘りのタスキリレーを見せ、２位をしっかりキープ。最後までブレーキなしで乗り切った。区間配置もさることながら、ほとんどの主力を万全の状態で送り出した調整力は目を引いた。

　全日本大学駅伝後に故障者が相次ぎ、苦戦を強いられた國學院大の前田康弘監督は冗談まじりに脱帽していた。「他大学もいろいろとあった思いますが、中央大だけは完璧に仕上げていました。今度、藤原監督と飲みたいですよ。どのように調整してきたのかを聞きたい」。敵将が認めたピーキングも、きっと藤原監督の手腕なのだろう。

構成●THE DIGEST編集部