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ラグビー

初優勝への転機となった運命のハドル。スピアーズのキャプテン立川理道は、円陣でどんなメッセージを送ったのか?【リーグワン】

吉田治良

2023.05.21

 69分の再逆転となるトライは、まさにハドルでの意思統一の賜物だった。密集から途中出場のSH藤原忍が蹴り上げたボックスキックを、ナンバー8のファウルア・マキシが相手と競り合いながら落とし、これをフォローしたWTB根塚洸雅がキャッチしてゲイン。ふたたび藤原が展開したボールを受け取ったのは、立川だった。
 
「キャッチした瞬間は誰かにパスをするか、自分でキャリーするかの判断で、キックというオプションはありませんでした。ただ、横を見たら木田が手を挙げて、しっかりオーラを出してくれていたので(笑)」

 とっさの判断で対角線に蹴った立川の正確無比のキックパスを、新人賞の最有力候補でもある木田がキャッチし、インゴールへと駆け抜けた。

 殊勲の木田は、ターニングポイントとなったハドルでの立川の言葉を、こう再現している。

「自分たちにもう一度フォーカスしよう。ここでバラバラになったらアカン、ひとつになって焦らず攻めようって。(立川キャプテンは)心の支えというか、言葉に重みがあるので、試合にいるかいないかで全然違うんです」

 2012年に入団し、16年からはキャプテンの重責を担う33歳のベテランから、近未来の日本代表を担うであろう大卒2年目のトライゲッターへ──。スピアーズの歴史を紡ぐようなキックパスから、初優勝を決めるトライは生まれた。それでも、「下部リーグ時代は想像もできなかった」と、日本一になった感慨を語った立川キャプテンは、どこまでも謙虚だった。

「自分のキックよりも、良かったのはその前。藤原のボックスキックの精度、マキシと根塚のハイボールへのコンテスト、そこからボールをリサイクルしたフォワードのハードワーク……トライまでの過程が素晴らしかった」

 謙虚でタフなリーダーに導かれ、ついに頂点を極めたスピアーズ。眩しいオレンジ色の輪の中で、苦労人の控え目な笑顔が弾けた。

取材・文●吉田治良
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