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ラグビー

「力を出せればできる」逆転トライで初の栄冠を手繰り寄せた木田晴斗。リーグワンで培った自信を手に世界の舞台へ

向風見也

2023.05.21

勝ち越しトライでチームに貢献した木田。写真:西村尚己/アフロスポーツ

勝ち越しトライでチームに貢献した木田。写真:西村尚己/アフロスポーツ

 木田晴斗の安否が心配されたのは、0-0で迎えた前半12分のことだ。

 5月20日、東京・国立競技場。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのウイングとして、国内リーグワンのプレーオフ決勝に出ていた。

 問題のシーンではまず、味方のキックが対する埼玉パナソニックワイルドナイツの混とん状態を作った。まもなく左のスペースでパスをもらった木田が一気に加速。約25メートルを駆け抜け、コーナーフラッグ付近にダイブした。

【公式動画】木田の決勝トライで東京ベイが初優勝!
 しかし、はじき出された。相手ウイングのマリカ・コロインベテに、タックルされた。

 会場はフットボールのスタジアムではなかった。木田が叩きつけられたのは、陸上トラックの上に緑のシートを張ったエリアだった。後頭部から落ちた。立つのが難しく、脳震盪チェックのため一時的に交代した。

 ところが…。

「軽い症状やったので、集中し直してプレーできた。よかったです」

 この瞬間を悔やむとしたら、トライを獲り切れなかったことだと話す。ここでは、オーストラリア代表のコロインベテが持ち場と逆側からカバーに回っていた。

 木田は日本代表入り、さらには海外クラブとの契約を目指している。向上心を滲ませる。

「コロインベテはバッキングアップ(戻り)がうまいし、速いなと。ここは成長(すべき点)。コース、判断について学べたと思います」

 チームにとって初めてとなる決勝の舞台で、木田は勇ましかった。途中、向こうの技術や圧力を食らうこともあったが、要所で爪痕を残した。

 6―0とリードしていた27分。敵陣22メートルエリア左中間に放たれた短いキックを、ジャンプ一番でキャッチ。チャンスを広げた。

 続く30分頃には、ハーフ線付近に落ちてきた相手のキックを捕球して駆ける。追いすがる南アフリカ代表センター、ダミアン・デアレンデを振りほどいた。

 最大のハイライトは後半29分だ。12―15と勝ち越された直後である。

 スピアーズはグラウンド中盤右からハイパントを飛ばし、チームで再獲得。左へ展開する。ここで最初にボールをもらったセンターの立川理道へ「ハルさん!」と、叫んだのが木田だった。

 無人のスペースへキックパスを呼び込み、受け取る。そのままゴールラインを割り、球を地面につけた。

 勝ち越しトライ!

 17―15でノーサイドを迎え、主将でもある立川にはこう称えられた。
「木田がオーラ出してくれた。僕にくれ! という」
 
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