ヒョードル、ミルコ・クロコップとのヘビー級3強によるライバル関係は世界中のファンを熱狂させた。当時、PRIDEはまぎれもなく世界最高峰の格闘技イベントだった。上からでも下からでも変幻自在、いつの間にか相手を絞め技・関節技で絡め取ってタップさせるノゲイラの闘いぶりは、「マジシャン」と呼ぶにふさわしかった。
とりわけ印象に残るのは、ミルコとの対戦。K-1でもトップクラスだった打撃を浴びてKO寸前に追い込まれながら、渾身の腕ひしぎ十字固めを極めた。
もうひとつの名勝負は、国立競技場でのボブ・サップ戦。飛ぶ鳥を落とす勢いだった巨漢パワーファイターにパワーボムまで食らいフラフラに。それでも粘りに粘っての腕十字。9万人の観客を沸かせたベストバウトだった。
ミルコ戦もサップ戦も、いわば奇跡の逆転勝利だ。ボロボロになっても勝利を掴み取る不屈の闘志。どれだけ劣勢でも、グラウンドに持ち込めば、サブミッションの態勢に入ればという期待感に、ノゲイラの魅力があった。
今でも思い出すのは、ミルコ戦を間近に控えた時期のことだ。ある柔術家の取材をした。何気ない会話の中で「ノゲイラ、ミルコに勝ちますかね?」と聞くと、彼はこう返した。
「大丈夫ですよ……勝ちますって」
自信満々、という感じではなかった。神妙な顔つきで、祈るような口ぶり。柔術の強さへの信仰を託していると言えばいいのか。ノゲイラはそういう想いの対象となるようなファイターだったのだ。
取材・文●橋本宗洋
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「大丈夫ですよ……勝ちますって」
自信満々、という感じではなかった。神妙な顔つきで、祈るような口ぶり。柔術の強さへの信仰を託していると言えばいいのか。ノゲイラはそういう想いの対象となるようなファイターだったのだ。
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