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【名馬列伝】桜花賞を“阻んだ”ベストパートナーと再タッグを組んだシーザリオ。驚異の鬼脚を繰り出し樫の女王へ!<前編>

三好達彦

2023.09.14

 次走はいよいよ初の重賞挑戦となるフラワーカップ(GⅢ、中山・芝1800m)に出走。単勝オッズ1.4倍の1番人気という圧倒的な支持を受けたシーザリオは先行・抜け出しというセンス抜群のレースを見せ、2着に2馬身半差をつけて圧勝。走破タイムの1分49秒0は当時のレースレコードであり、これで文句なく牝馬クラシックの主役となった。

 迎えた一冠目の桜花賞(GⅠ、阪神・芝1600m)。ここでシーザリオは、ひとつの試練に遭う。デビュー以来ずっと手綱をとってきた福永が、こちらも有力馬で先約のあったラインクラフトに乗ることになったのだ。

 よってシーザリオは今回、地方・名古屋競馬からスポット参戦する吉田稔に鞍上をスイッチすることになる。角居の信頼も厚い騎手で、中央での騎乗経験も多いジョッキーだけにファンはそれを不安材料とは捉えず、単勝オッズ3.9倍の1番人気に推された。

 レースは外の17番枠からのスタートながらも3~4番手の好位置をキープしたラインクラフトに対し、シーザリオはスタート直後に内の馬に前へ入られて後方から進まざるを得なくなった。のちに、この位置取りの違いがもろに結果につながってしまう。

 ラインクラフトは直線で先に抜け出したが、そこへ外からシーザリオが急襲。際どい勝負に持ち込んだが、ラインクラフトがアタマ差粘って勝利を手繰り寄せ、シーザリオは4戦目にして初めて先着を許した。
 
 ところが、二冠目のオークス(GⅠ、東京・芝2400m)には距離適性を重視してNHKマイルカップ(GⅠ、東京・芝1600m)へと進路をとったため、桜花賞馬のラインクラフトが不在となった。その影響によってシーザリオには、もともと手綱を取っていた福永が鞍上に戻るという朗報が届いた。

 こうなるとオークスはシーザリオの「一強」という見方が一気に強くなり、単勝オッズ1.5倍の1番人気という圧倒的な支持を受けての出走となった。

 ところが、レースは意外な苦戦となる。シーザリオは珍しくスタートで後手を踏んで後方からの競馬となり、2番人気で中団を進むエアメサイア、こちらも角居厩舎が送り込んだ3番人気のディアデラノビアを前に見ながら直線にかけることを余儀なくされた。

 しかし、シーザリオの図抜けたポテンシャルを知る福永は慌てなかった。直線へ向いてエアメサイアが先頭に立ち、その後ろからディアデラノビアがそれを追う激烈な戦いとなったが、第4コーナーを回った時点では12番手にいたシーザリオは上がり3ハロン33秒3という鬼脚を繰り出し、粘り込みを図るエアメサイアをクビ差交わして66代目のオークス馬に輝いた。これは、父スペシャルウィークにとって初となる産駒GⅠ制覇となった。(文中敬称略)<後編に続く>

文●三好達彦

【動画】日米オークス制覇を成し遂げた名牝シーザリオの活躍をプレイバック

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