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【名馬列伝】名伯楽・角居勝彦の名を世界に轟かせたシーザリオの大偉業。天に召されてもなお、偉大な血脈は息吹を注ぐ<後編>

三好達彦

2023.09.14

 その後、シーザリオは前記のようにデビュー前から不安視されていた脚部不安(繋靭帯炎)を再発して休養に入る。結局復帰は叶わず、わずか6戦にして競走馬としての幕を下ろすことになった。スポーツの世界に「たられば」は禁物だと言われるが、それでもなお無事であれば…と思わせるのがシーザリオの魅力であり、魔力でもあった。

 そして母親になってもシーザリオは、やはり半端なかった。2010年に産んだ牡馬エピファネイア(父シンボリクリスエス)は、現役時代にジャパンカップ(GⅠ)などを制し、スタッドインしてからは初年度産駒から無敗の牝馬三冠デアリングタクトを輩出するなど、いまや日本の生産界において最重要種牡馬になっている。

 2013年に産んだ父キングカメハメハの牡駒は、朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)を制して2015年度の最優秀2歳牡馬に輝いたリオンディーズ。こちらも種牡馬入りした初年度から191頭に種付けする人気を集め、コンスタントに重賞勝ち馬を出し続けている。

 そして2016年に産んだ9番仔、父ロードカナロアの牡駒サートゥルナーリアは、2歳時にホープフルステークス、3歳時に皐月賞と2つのGⅠを制して、2019年度の最優秀3歳牡馬のタイトルを獲得。種牡馬入りしてからの評判も極めて高く、初年度から200頭以上の交配相手を集め、2022年のセレクトセールでは落札価格が億を超える超高額産駒を3頭も出している。

 GⅠホースを3頭も送り出した繁殖牝馬はダンシングキイ(ダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムード)とハルーワスウィート(ヴィルシーナ、シュヴァルグラン、ヴィブロス)に次ぐ史上3頭目である。
 
 2021年2月27日に急病で落命したシーザリオだが、3頭のGⅠサイアーによってその血を伝え、いかに非凡なスーパーホースであったか。今も筆者の記憶の中に、極めて強く印象付けられている名牝である。

 短い競走生活をほぼ完璧な成績で終え、繁殖牝馬としても日本の生産界で歴史に残るような働きを見せたシーザリオ。こんな牝馬は、そうそういない。(文中敬称略)

文●三好達彦

【動画】史上初の米オークスを制したシーザリオをプレイバック

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