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【名馬列伝】外国馬に門戸が開かれた時代に来日した名牝スノーフェアリー。一流の日本馬を軽く一蹴した“世界トップ”の強さに衝撃

THE DIGEST編集部

2023.11.03

 2010年の春に英オークス、愛オークスで勝利を収めた3歳のスノーフェアリーは、秋にアジアへの遠征を計画。エリザベス女王杯、ジャパンカップ、その後は香港カップと転戦するプランだった。

 2005年にウィジャボード(Ouija Board)でジャパンカップ(5着)に参戦した経験を持つ英国の名伯楽、エドワード・ダンロップ調教師が、英国でリーディングジョッキーに3度(当時)輝いているライアン・ムーアを伴って、英・愛オークス馬で乗りこんでくる。それだけでも大きな話題になった。

 迎えた11月のエリザベス女王杯。人気を集めたのは前走の秋華賞を勝って牝馬三冠を達成したばかりのアパパネや、京都大賞典で牡馬をなで斬りにして臨んできたメイショウベルーガなど日本馬が中心。スノーフェアリーは日本の高速馬場への適性を疑問視する向きもあり、単勝オッズ8.5倍の4番人気にとどまった。

 しかし、戦いの火蓋が切って落とされると欧州の3歳牝馬としてトップに立つ若き女王が圧巻のパフォーマンスを披露した。

 スノーフェアリーは中団の前目を進むと、最終コーナーを回ったところで内に進路を取り、前にいたアパパネを交わすとそれを一気に突き放し、ゴールでは後方から追い込んだメイショウベルーガに4馬身(0秒7)もの差を付けていた。2着以下とはまったく別次元の競馬を見せられた日本の騎手や調教師は、ただただ唖然とするしかなかった。

 その後、スノーフェアリーは疲労のためジャパンカップへの出走を回避したものの、渡航して臨んだ香港カップはゴール前の競り合いをクビ差で制して優勝。アジアツアーでGⅠ2勝を挙げる素晴らしい成果を残した。

 これらの成績を受け、彼女はカルティエ賞(欧州のJRA賞にあたる)で最優秀3歳牝馬に選出された。

【動画】実況も「すんごい脚!」と唖然!? 衝撃的強さでエリ女を制した外国馬スノーフェアリー
 翌2011年、スノーフェアリーはGⅠ戦線で2着2回、3着2回と善戦しながら、なかなか勝利を挙げられずにいた。それでも9月3日の愛チャンピオンステークス(2着)、10月2日の仏・凱旋門賞(3着)、さらに10月15日の英チャンピオンステークス(3着)という強行軍をこなしながら、連覇を目指してエリザベス女王杯へ臨んできた。

 前年の圧勝劇が記憶に新しいスノーフェアリーは、単勝オッズ2.7倍と堂々の1番人気の支持を受ける。対する日本馬は秋華賞を勝って臨んできたアヴェンチュラ、前年3着のアパパネらが人気を集めた。

 大きな期待を寄せられた前年の女王だったが、レースは意外な苦戦を強いられる。シンメイフジの大逃げで進んだ今回、大外18番枠からのスタートで行き脚がつかなかったスノーフェアリーは、人気の日本馬が先行策を取るなか、13番手という後方に付ける。第3コーナーを過ぎてもシンメイフジは後続を引き離しており、スノーフェアリーも馬群の外から徐々に位置を上げながら最終コーナーを回る。

 そして直線。シンメイフジが粘ろうとするところへホエールキャプチャ、アパパネ、アヴェンチュラが襲い掛かり、勝負はこの3頭のいずれかで決まると思われた瞬間のことだった。いつの間にか内へ進路をとっていたスノーフェアリーがホエールキャプチャとアパパネの狭い隙間へ突っ込み、一瞬にして先頭に立つ。外からしぶとく伸びたアヴェンチュラをクビ差抑えたスノーフェアリーが見事に連覇を達成し、日本の競馬ファンに鮮烈な印象を残した。

 スノーフェアリーの底力を見せつけられるとともに、名手ライアン・ムーアの手綱さばきの凄みさえ感じさせる技量の高さもピカイチに光った一戦だった。

 翌年、屈腱炎から再起を果たしたスノーフェアリーはフランキー・デットーリとのコンビでGⅠ愛チャンピオンステークスをレコードタイム(2分0秒92)で制する。しかしその後、屈腱炎が再発したため現役を引退。通算21戦8勝(うちGⅠ6勝)と、名牝と呼ぶにふさわしい成績と日本競馬界に強烈な足跡を残し、繁殖生活に入った。

※11月4日、8時35分に一部表現を訂正

文●三好達彦

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