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名牝系の血筋継ぐナミュールが8度目の挑戦で悲願の初V! “代打騎乗”で大仕事をやってのけた藤岡康太の手綱さばきにも拍手!【マイルCS】

三好達彦

2023.11.21

 前日の午前まで降った雨の影響で「稍重」スタートとなったこの日の京都競馬場だったが、晴天に恵まれて第9レースからは「良」に回復。やや渋みは残って、いわゆる「時計がかかる馬場」のもとでの開催となった。

 ゲートが開くとシュネルマイスターがアオって出遅れ、最後方に置かれる。セリフォスは3番手を追走し、ソウルラッシュは中団の9番手付近につけ、ナミュールはシュネルマイスターの目前、14番手あたりでレースを進めた。

 1000mの通過ラップは58秒2と、雨の影響がまだ残る。時計がかかる馬場状態を考慮すると、ペースはやや速い。そうした流れのなか、第3コーナーからの坂の下りを利用しながら後方から進んでいた馬たちも前との差を詰めながら馬群は直線へ向く。

 各馬が横に広がって激しい追い比べが展開されるなか、インを突いてまずソウルラッシュが先頭に立つが、そこへ7番人気の伏兵ジャスティンカフェが迫る。この2頭で決まるかと思われた刹那、外から桁違いの脚色で猛然と襲い掛かったのが紅一点のナミュールだった。一完歩ごとに差を詰めると、インで粘るソウルラッシュをクビ差交わしてゴール。念願のビッグタイトルを手にしたのだった。

 ちなみに、レース当日での乗り替わりでGⅠを勝ったケースは今回が初めて(1994年のグレード制導入後)。一方、人気上位の2頭だったシュネルマイスターとセリフォスだが、両頭とも末脚の伸びを欠いて上位進出はならなかった。
 
 ナミュールの父は、ペルシアンナイト、モズカッチャン、ディアドラ、ブラストワンピースなどのGⅠホースを出しているハービンジャー。母サンブルエミューズ(父ダイワメジャー)は、昨年のアルテミスステークス(GⅢ)で、のちに三冠牝馬に輝くリバティアイランドを負かして優勝したラヴェル(牝3歳/栗東・矢作芳人厩舎)も輩出。さらにナミュールの曾祖母は1997年の桜花賞馬キョウエイマーチという名牝系の血統を受け継いでいる。

 彼女はオークス3着、秋華賞2着と善戦はするものの、なかなかGⅠには手が届かなかった。末脚の切れ味には定評があったが、追い込みというレース展開に左右されやすい脚質でもあって、歯がゆい競馬が続いていた。

 しかし、今秋はモレイラ騎手が乗った始動戦の富士ステークス(GⅡ)で、昨年のチューリップ賞(GⅡ)以来1年7か月ぶりの勝利を挙げてひと皮剥けた印象を残すと、その勢いを駆って今回の大仕事を成し遂げた。
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