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会心の”ユタカ・マジック”はなぜ起こせたのか? 武豊とドウデュースが築き上げた不変の絆【有馬記念】

三好達彦

2023.12.26

 去る10月29日、東京競馬の第5レースが終わって下馬した際、馬に足を蹴られて右太腿の筋挫傷の怪我を負った武騎手。当日の天皇賞(秋)は乗り替わりとなり、ジャパンカップにも復帰は間に合わなかった。

 武豊騎手と厚い信頼関係を築くドウデュース自身も、不本意な競馬で連敗していた厳しい流れのなか、同騎手は「ドウデュースと有馬記念へ」という命題が辛いリハビリをやり抜くモチベーションになったという。

 その目標を最高の形で成就させた武騎手は、勝利騎手インタビューの冒頭で「ドウデュースも私も帰ってきました」とファンに向けて喜びの声を届けた。それは長い不振から脱し、キズナとのコンビで2013年の日本ダービーを制した際のコメントを自ら引用したものだった。

 ヒートオンビート(牡6歳)、ハーパー(牝3歳)と3頭出しで臨んだ友道調教師は、「(ドウデュースは)武豊騎手が乗っている時はとても気分が良さそうで、1週前追い切りにも乗ってくれて、動きが変わっていきました」とコメントし、彼らが唯一無二のコンビであることをあらためて表現した。

 それだけではない。「武豊騎手で凱旋門賞に勝つのが夢」と公言する(株)キーファーズの代表取締役社長、松島正昭オーナーは来年、再びドウデュースで凱旋門賞(仏GⅠ)を狙いに行く意思を示しているという。大敗はしたものの、昨年の経験は決して無駄にはならないはず。期待を込めて、その動向を注視したい。
 
 大外16番枠に入る不運を跳ね返して2着に入ったスターズオンアースの走りは、牝馬クラシック二冠制覇、またその後もGⅠで牡馬と互角の勝負を続けてきた力をあらためて認識させるに十分なパフォーマンスを見せた。そして、好スタートから無理なく2番手で流れに乗せたクリストフ・ルメール騎手もトップ・オブ・トップならではの手腕と言えるものだった。

 有馬記念が「ラストラン」のタイトルホルダーも、今春の天皇賞で競走中止してから歯車がかみ合わない競馬が続いていたが、思い切った逃げで本来の力量を示しての3着。最終レース後には引退式が行なわれ、自身の力を出し切ることができたのが多くのファンにとって幸福なエンディングだったと言えるだろう。種牡馬としての成功を祈りたい。

 筆者が残念だと感じたのは、プレビュー記事で「主軸」と推したタスティエーラ(牡3歳/美浦・堀宣行厩舎)が6着に敗れたことだ。

 前走比+18㎏の馬体重は決して重め残りには見えず、ライアン・ムーア騎手も「馬の状態はすごく良かった」とコメントしている。そして道中はコースロスを最小限にとどめるため馬群のなかで我慢させ、直線でゴーサインを出したところでジャスティンパレスに進路をカットされる。

 ムーア騎手は危険回避のため、腰を浮かせながら手綱を引かざるを得なくなかった。これにより、ジャスティンパレスの横山武史騎手は『内側に斜行したことについて過怠金3万円』を課された。ムーア騎手は、「手応えはあったが、第4コーナーから直線までスムーズに運べなかった。最後はいい脚を使ったが、届かなかったのはそのせいかもしれない」と悔しさをにじませていたと聞く。

 馬群を割る競馬をすれば、前が詰まるリスクを背負うのは必然である。だが、それにしてもタスティエーラにとっては、あまりに惜しいレースとなってしまった。

 その他、単勝オッズ44.6倍の8番人気に甘んじたシャフリヤール(牡5歳/栗東・藤原英昭厩舎)が見せ場十分の5着に踏ん張ったことが光る。ブリーダーズカップ・ターフ(G1)で3着に健闘したあと、香港ヴァーズ(G1)に出走するために渡航していたが、現地で歩様の異常という判断で出走できなくなり、急きょ帰国しての参戦となったが、ここまでコンディションを維持したスタッフに敬意を表したいと思う。

取材・文●三好達彦

【動画】”ユタカ・マジック”が炸裂!武豊とドウデュースの最強コンビが有馬記念で劇的復活!
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