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フィギュア

日本男子フィギュアスケート黄金時代を迎える中、羽生結弦がさらなる高みを目指す理由

辛仁夏

2020.02.05

ただジャンプだけではない。プログラムの完成度の高さを重視する。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

ただジャンプだけではない。プログラムの完成度の高さを重視する。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 今季はグランプリ(GP)シリーズ2大会で優勝した後、GPファイナルでは世界選手権2連覇中で北京五輪金メダル候補のネイサン・チェン(米国)に合計得点で約43.87点もの大差で敗れ、4年ぶりに出場した全日本選手権ではSP1位からフリーでジャンプミスを 連発して同大会3連覇中だった宇野に初めて負けた。

 直近の2つの大会でこれまでのような絶対的な強さが影を潜めているが、GPファイナル時にいくつか今後を示唆するコメントを残し、高みを目指して渇望する王者の思いがあふれていた。「今回は勝負には負けたが、自分の中での勝負にある程度勝てたので、一歩強くなれたんじゃないかな」と成長できた試合だったと振り返った。

 また、「(習得に挑んでいる)4回転アクセルは王様のジャンプで、それをやった上でジャンプだけじゃなく、フィギュアスケーターとしてちゃんと(プログラムを)完成させられるものにしたい気持ちは強いです。ただ、全体としてかなり難しいことは自分としても十分にわかっていますが…」と、前人未踏の4回転アクセルに取り組むことがどれだけのリスクを伴うか、それが勝負において大きな武器になるかどうかもわからないとも口にした。
 
 それでも、羽生は右足首に“爆弾”(度重なるけがで靱帯が緩んでいる状態)を抱えながらも、4回転アクセルを公式戦で最初に跳んだ選手になるつもりだ。さらには、高難易度のジャンプ構成を組み込みながらも、作品として魅せるプログラムを完成させたいという意気込みを持っている。

 羽生の前にはこれまで強力なライバルが何人も出現しており、その相手が強ければ強いほどライバル心を燃やして自らを磨き、その負けず嫌いという根っからのアスリート気質の本領を発揮してきた。

「いまは圧倒的な武器が必要だが、それが価値あるやるべきことじゃないかもしれない。ただ、これはやっぱり僕自身のプライド。スケートを支えている芯なので、(4回転アクセルは)絶対に跳びたいなと思っています」

 五輪を2度制覇したトップスケーターとして、最高の技術と滑りを見せたいという自負心が今の羽生を突き動かしている。羽生が出場する今季の公式戦は、2月の四大陸選手権(ソウル)と3月の世界選手権(モントリオール)。この2試合でどこまで完成形のプログラムを見せられるのか、期待しながら注目したい。
 
文●辛仁夏 YINHA SYNN
1990年代に新聞記者となり、2000年代からフリーランス記者として取材活動を始め、現在に至る。フィギュアスケート、テニス、体操などのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材する。

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