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競馬

クロワデュノール陣営の魂の込もったリベンジ舞台。大けがを乗り越えたダービージョッキーが電話で吐露した忘れ難い言葉【日本ダービー】

三好達彦

2025.06.04

 ゴール版を過ぎた北村騎手は右手でガッツポーズを決めると、間髪入れず鞍下の相棒を指さしながら、あたかも「自分じゃない。馬を褒めてやってくれ!」と言わんばかりにファンへとアピール。鮮やかな勝利に酔いしれる満場のファンに迎えられたウイニングランの際にも幾度となく指さしながらクロワデュノールへの賞賛を促した。

「僕がダービージョッキー(になった)というよりも、クロワデュノールがダービー馬となれたことが何より嬉しいですし、そこに最高のエスコートをできたことが一番良かったと思います」

 そう感想を述べた北村騎手は、さらに続ける。

「僕の思いは一点だけ、馬を信じること、自分を信じること、”信じる”という点だけです。本当にずっと人馬一体になれていたような気がして、余計なことをしなくても馬がいいリズムで走ってくれていました。絶対伸びると信じていましたし、手応え通りといえばその通りなのですが、信じた結果がこうして1着に結びついて良かったです」
 
 その自信の根底にはクロワデュノールの状態の素晴らしさがあったのだろう。パドックでは力強く、そして落ち着き払った様子がひと際印象に残ったし、その状態は本馬場入場、返し馬でもキープされ、さらにはレースでの折り合いの良さ、そこから導かれる終いの頑張りにも結び付いた。斉藤調教師が「皐月賞からダービーまで(牧場、厩舎、騎手が)一丸となってやってきた」と述べたように、すべてのスタッフの尽力が結実した一点の曇りもない完璧な勝利だったと言えるだろう。

 北村騎手はデビュー20年目の38歳。すでに通算1000勝を超える実績を持つが、そのキャリアのなかでは数度の落馬事故に見舞われてきた。なかでも2021年5月の事故では椎体骨々折、右肩甲骨々折で手術を行ない、後日の検査で背骨8本も骨折していたことが分かるという重傷で、復帰までには1年1か月もの休養が必要だった。

 その間に、斉藤調教師との絆を深めたクロノジェネシスから降板せざるを得ない悲しみにも見舞われた。リハビリに励んでいたさなか、彼に電話取材した際に「怪我で乗り替わるのは仕方ない。だけど、クロノジェネシスがどこまで伸びていくのかを体験できないのはとても悔しい」と心情を吐露したことは忘れ難い。それだけに斉藤調教師と大仕事をやってのけたウイニングランの際に筆者は涙を禁じ得なかった。

 そして、決して派手とは言えないジョッキーが一緒にキャリアを積み重ねた愛馬とともに偉業を成し遂げるという意味では、2006年にメイショウサムソンと春のクラシック二冠を制した石橋守騎手(現調教師)のコンビに対するのと同じような感動を覚えた。

 クロワデュノールは秋、すでに登録を済ませている凱旋門賞(仏G1)を含めてレースを選択していくという。いずれにしろ、北村騎手とのコンビを1戦でも長く観られるように願ってやまない。
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