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格闘技・プロレス

「僕が普通にやったらみんなの想像の範囲内」“ツチノコレスラー”矢野通のプロレスの魅力とは?

保坂明美(THE DIGEST編集部)

2020.12.02

『WORLD TAG LEAGUE 2020』では石井智宏と組み、現在5勝2敗の単独トップとなっている。(C)新日本プロレス

『WORLD TAG LEAGUE 2020』では石井智宏と組み、現在5勝2敗の単独トップとなっている。(C)新日本プロレス

 あくまでも自分の存在を示すため、居場所を作るために戦っているのだという。始めのうちはブーイングも浴びたが、「正統派の戦い方はしない」ことでその価値を自ら作り、見る側が位置づけていきキャラクターができていった。ヒールだとか、ヒールでないとかいうものはなく、“矢野通のプロレス”がそこにある。

「後にも先にも矢野通は矢野通しかいないという形で完結したい。それが僕の目標ですね。想像を超える、というよりは、上にいくこともあれば、下もある。僕は平気で下に行けちゃうし、それが想像の枠の外なら、それでいい。別に超えることが全てではない。ただ、僕みたいなのは、わかりやすい人がいないと意味がない。棚橋弘至、オカダ・カズチカ、手段を択ばず存在意義を示す人…。いろんな人がいるから、僕のようなツチノコレスラーが存在できるんです」

 選手の多くが「もう2度とやりやくない」と口にするほど、相手の虚を突き、恥ずかしい形で敗戦へと追い込む矢野のプロレスは、時にファンから「ちゃんとやれば強いのに」と言われることがある。小学生からアマレスを始め、高校時代は選抜、総体、国体の三冠、大学時代は全日本学生、全日本大学選手権で、フリー、グレコローマンの両部門の四冠を制覇するなど、実績は折り紙つきの選手だからだ。

 しかしそこで“ちゃんとやらない”のが矢野だ。「だって、僕が普通にやったら、みんなが思ってくるくらいの、想像とおりのプロレスラーにしかなりませんよ。普通にやらないから見たことのないプロレスラーになる」
 
 現在開催中の『WORLD TAG LEAGUE 2020』では5勝2敗で単独首位。パートナーであるCHAOSの石井智宏とは、IWGPヘビー級タッグ王者も経験してきただけに、「石井さんがCHAOSのお父さん、僕がお母さんと言われているのですが、何もしゃべらなくても意思の疎通はできています」と言うように、息の合った戦いを見せている。

 さらに現在トロフィーを保持している『KOPW』の2020年王座も虎視眈々と狙う。

「もし試合がなければこのまま王者にはなれちゃうのですが、どうせだったら『2020初代KOPWチャンピオン矢野通!』ってリング上でコールされたい。ルールの投票もやって戦って勝ちたい。今の想像の枠の外にあるルールを提案できたりするのが、このタイトルの面白さなので寝ずに考えます」

 新日本プロレスの今年の戦いも、本格的な終盤を迎えた。残りわずかな2020年、矢野通の“ツチノコ”ぶりを堪能したい。

文●保坂明美(THE DIGEST編集部)

【PHOTO】新日本プロレス『KOPW 2020』決定戦4WAYマッチ 初代王者は矢野通に!

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