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“菜食”を選択するアスリートたち。きっかけはドーピング、差別や偏見をなくしたいという思い【テニス・日比野菜緒&パラ水泳・一ノ瀬メイ対談|前編】

内田暁

2021.02.20

日比野は自分のためにテニスをするという考えから、次世代に何かを伝えたいという思考の変化が生まれてきたという。(C)Getty Images

日比野は自分のためにテニスをするという考えから、次世代に何かを伝えたいという思考の変化が生まれてきたという。(C)Getty Images

日比野 「すごーい。メイちゃん、まだ23歳でしょ……すごいわ。私はメイちゃんと逆で、テニスの世界ランキングで日本1位になっても、メディアにほとんど取り上げてもらえなかった。結果を残しているのに知名度や発信力がないことを、周りのせいにしていたところもあったけれど、今メイちゃんの言葉を聞いて、自分がもっと魅力的になれば違うところから取材してもらえるかもしれないし、変わっていくのかなって思えました」

一ノ瀬 「私も、初めて全日本選手権で優勝した小学6年生のとき、小学校でもそのことを誰も知らなくて。水泳で結果出すだけでは聞いてもらえへんなと思ったから、スピーチコンテストという別の手段を探った。水泳での日本一と、スピーチコンテストの日本一が掛け合わさったから、レアな存在になれたのかなと思っていて。

 だから菜緒ちゃんの気持ちは、すごくわかる。パラ水泳って、競技そのものには固定ファンはいないやん。フィギュアスケートなら競技にファンがいるので、そこで活躍すればフィギュアのファンがついてきてくれるけれど、パラ水泳は競技そのもののファンってほとんどいないので、ゼロから獲得しないといけない。その意味で、水泳以外の策も模索しながら来たかなって感じかな」

日比野 「圧倒されちゃった……。それで言ったら、わたしに何か発言したいことがあるのかというそもそも論。そこを自分に聞きたい」

一ノ瀬 「じゃあシンプルに、菜緒ちゃんがテニスする理由ってなんなん?」

日比野 「難しい質問きました(笑)! わたしは、自分ができないと思っていたことをできるようになった達成感が好きで、自分のためにやっている感がある。自分の成長のためにやっているのが大きい。メイちゃんが、結果が全てじゃないと思えたのは、いつ頃から?」
 
一ノ瀬 「徐々にだと思う。スポーツ以外の人たちの声を聞けたことが大きかった。スポーツの世界にいると、自分も周りも結果が全てになってしまうけれど、一歩外に踏み出すと、案外周りの人って、自分たちが思っていたほど結果気にしてないなって。自分のいる世界を客観的に見られるようになってから、変わった。それまですごく主観的に見ていたけれど、それをもっと俯瞰的に、スポーツの世界にいる一ノ瀬メイって見た時に、『あ、そんなに結果にこだわらんでもええやん』って思えた」

日比野 「いかにわたしが、自分のことだけ考えてテニスをしてきたかがわかりました。
でもわたしも、テニスで最終的に何をしたいかといえば、人に伝えたいんだよね。最近26歳になって本当に色々と考えた時、自分のためだけにテニスをする時期って終わったのかな、次世代に何かを伝えるべきなのかなって思った。次の世代のためにも、日本でテニスが魅力的なスポーツだと思われるように、何かアクションを起こしたいなとずっと思っていたので。だから今日、ヒントもらえました、メイちゃんから」

一ノ瀬 「そう言ってもらえて、うれしい!」

 食の志向からアスリートとしての立ち位置まで、次々と展開していく話題に、尽きぬ関心。その多様性にこそ、2人の思考の履歴が込められている。

 種々の色を帯びながら、まだまだ続く2人の対談。後編では、食と、それぞれの競技の関連性について語ってくれた。

取材・構成●内田暁

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