専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
ラグビー

【ラグビーW杯をヒット記事で振り返る!】「審判の25分間」を乗り越えてスコットランドにリベンジ達成。日本代表はどこまで歴史を塗り替えれば気が済むのか

吉田治良

2019.11.11

 それでも、歴史の扉はそう簡単には開かない。
 ティア1の意地だろう。伝統国スコットランドの逆襲が、ここから始まる。

 49分にフォワードのパワーで押し切って1トライを返すと、さらに54分にもクイックスローを起点に継続してパスをつなぎ、最後はザンダー・フェガーソンがねじ込む。ラッセルのコンバージョンも決まって、28-21と瞬く間に1トライ・1ゴール差。勝ち抜けるにはもう1トライを奪ってボーナスポイントを獲得したうえで、逆転しなくてはならない。選手交代でリフレッシュしたスコットランドが、重量フォワードを前面に圧力を強めていく。

 試練の、審判の25分間が、ここから始まった。

 ブレイクダウンで後手に回り、堀江が珍しくラインアウトのスローでミスを犯す。時計の針が一向に進まない。耐える時間は、永遠に続くのではないかとさえ思えた。

 それでも、ピッチに立つ選手たちは冷静だった。中村の試合後のコメントが印象的だ。

「確かに圧力は感じた。でも……練習の時のノンメンバー(ベンチ外メンバー)のアタックの圧力のほうが上かなと。だから、落ち着いて守れた」

 精神的に受けに回っているように見えていたのは、実は、外野の人間だけだったのかもしれない。自分たちのプレーに確信を持つジャパンの面々が、スコットランドの攻勢に怯むことも、その自信が揺らぐこともなかった。
 
 さらに、もうひとつ。台風19号によって大きな被害を受けた人たちのために、そして、さまざまな困難を乗り越え、この試合の実現に努力してくれた人たちのために──。そんな想いも、彼らの背中を押していただろう。

 リーチは言った。
「これは、我々のためだけの試合ではなかった。こういう時こそ、日本のために戦わなくてはならなかった」

 こうして、日本は試練の時を耐え抜いた。

 勝因について問われた田村は、こう答えている。
「気持じゃないですか? ここには高いスキルを持った日本のトップの選手が集まっているけど、今日の試合は高校生や大学生にも参考になったと思う。全員がタックルをバチバチ入れて、相手よりもちょっとでも動こうという気持ちで掴んだ勝利だったから」

 4年前、錆び付いてピクリとも動かなかった歴史の扉は、一筋の光が差し込むまでは押し開かれた。けれど、扉を完全に開け放ち、その向こうへと歩を進めることは叶わなかった。

 だが、ついに歴史は変わったのだ。

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号