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ラグビー

胸を張れ、顔を上げよ。ラグビー日本代表がW杯で蒔いた「未来への種」

吉田治良

2019.10.22

南アのモールの強さに、日本は心も身体も削られていった。写真:茂木あきら(THE DIGEST編集部)

南アのモールの強さに、日本は心も身体も削られていった。写真:茂木あきら(THE DIGEST編集部)

 その後も日本は、オフロードやフリックなど、南アフリカの鋭い出足を紙一重でかわすようなギャンブル性の高いパスを駆使して局面打開を試みる。キックで翻弄された9月のテストマッチ(7-41の完敗)とは異なり、FBの山中亮平、WTBの松島幸太朗らのハイパント処理も安定していた。

 ただ、ボール支配率が高まり、優勢に見えてその実、田村はこんなジレンマを抱えていたという。

「相手がシンビンになって、いろんなことができてしまったので、逆にブレてしまったところがある。本当はもっと蹴りたかった」


 当初のゲームプランが曖昧になった日本は、
15人に戻った南アフリカのパワーを真正面から受け止める格好となり、徐々に後退を余儀なくされる。とりわけセットピースとモールでは圧倒的に分が悪く、これがダメージとなって主導権を譲り渡していくのだ。

 それでもプール戦を1位で勝ち上がった自信とプライドで、日本は耐えた。前半の終了間際には、モールを押し込まれて立て続けにピンチを招くが、相手のノックオンや反則で辛くも失点を免れる。まだツキも味方していた。
 
 しかし──。自分たちの土俵、すなわちフィジカル勝負に引きずり込もうという南アフリカの戦略は、冷酷なまでに徹底されていた。この日はリザーブの8人のうち6人がFW。後半の立ち上がりにスクラムでプッシュして反則を誘い、SOハンドレ・ポラードの2本のPGで首尾よく加点すると、そこからフレッシュな重戦車を次々と投入(54分までにフロントローを総入れ替え)。日本を圧し潰しにかかるのだ。

 脇腹を痛めた田村、ハムストリングに不安のあった稲垣を、後半の立ち上がり早々にベンチに下げざるを得なかった想定外のアクシデントもあって、日本は終盤、まるでロープを背負いながらハードパンチをかわすボクサーのような戦いを強いられる。南アフリカの早い潰しに外への展開を阻まれ、これまでトライの山を築いてきた福岡、松島という“2台のフェラーリ”も、アクセルを踏み込むきっかけさえ与えてもらえなかった。

 64分のPGで3-14。スコア的にはまだ逆転の可能性もあったが、日本の忍耐力もここが限界だった。66分にハーフウェーラインからドライビングモールで一気に自陣ゴール前まで押し込まれ、最後はデクラークに中央へグラウンディングされる。そして、なんとか1トライを返そうと前がかりになって攻め込んだ70分には、ターンオーバーからWTBチェスリン・コルビに強烈なカウンターを浴びるのだ。
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