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【名馬列伝】京都に咲き、京都に散ったライスシャワー。宿敵の三冠を阻んだ菊花賞はいかなるレースだったのか?<前編>

三好達彦

2022.07.25

 菊花賞の盛り上がりは異様だった。なにしろミホノブルボンには史上2頭目となる“無敗での三冠制覇”という偉業がかかっており、そのシーンをひと目見たいと競馬場には10万人を超す観衆が押し寄せ、舞台裏では三冠を祝福するセレモニーの準備までされていたのである。

 ただミホノブルボン陣営にも不安があった。出走するキョウエイボーガン陣営が「逃げ宣言」をぶち上げたからである。
 
 ミホノブルボンはスプリングステークス以降、ずっと逃げる競馬ばかりをしているため、先頭に立てないとカカって追いかける可能性があるからだ。

 逆に的場にとって、これは朗報だった。ミホノブルボンが道中カカってスタミナをロスして少しでも末脚が鈍れば、ライスがそれを負かせる可能性が高くなると考えたからだ。

 レースは的場が頭のなかに描いた“理想的な展開”になった。キョウエイボーガンがしゃかりきに先頭を奪うと、ミホノブルボンが2番手を進んだが、鞍上の小島貞弘騎手は行きたがる馬を押さえるのに苦心していた。その様子を目前に、ライスシャワーは5番手の好位置を進んでいた。

 動きが起こったのは最終コーナーの手前。逃げバテたキョウエイボーガンを交わしてミホノブルボンが先頭に立つが、道中を力んで走った分、末脚にいつもの力感がない。そして、そこへ襲い掛かったのがライスシャワーだった。まるで獲物を目の前にした猛獣のような鋭さでミホノブルボンに迫り、それを交わすと、1馬身1/4の差を付けて念願のGⅠ制覇を果たした。走破タイムの3分05秒0は当時のJRAレコードだった。

 しかし観衆はざわめくばかりで、一向に勝者を称える声や拍手は聞こえてこない。聞こえるのはミホノブルボンの三冠制覇が阻止されたために吐き出される溜息ばかり。まるで盛り上がりに水を差したことを責めるような雰囲気さえ場内に漂った。

 レース後、ライスシャワーは有難くないニックネームを背負わされることになる。

 それは「ヒール(悪役)」である。
(文中敬称略/前編・了)

文●三好達彦
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