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モータースポーツ

【名馬列伝】並み居るエリート血統馬を打ち破った‟マイナー種牡馬”の仔、セイウンスカイが放った檜舞台での輝き

三好達彦

2022.09.12

 日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)はスペシャルウィークらの後塵を拝して4着に敗れたセイウンスカイ。その後は西山牧場で夏を休養に充て、秋は古馬相手の京都大賞典(GⅡ、京都・芝2400m)から始動する。

 菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)を目指す馬は通常、3歳限定戦の京都新聞杯(GⅡ、京都・芝2200m)をステップにするものだが、セイウンスカイにはゲートに入るのを嫌がる面があり、これまでに二度、発走再審査の処分を受けたことがあった。そのため万が一、京都新聞杯で同様の処分を受けることがあった場合、日程の関係で菊花賞に出走できなくなる危険性が生じるため、その1週前に行われる京都大賞典をステップレースに選んだのである。

 この年の京都大賞典は、メジロブライト、シルクジャスティス、ステイゴールドら古馬の強豪が顔を揃えており、セイウンスカイは苦戦も予想されたが、好スタートから先頭を奪ってマイペースに持ち込むと、並み居る強者たちを完封。大一番を前に満点の回答を出し、あらためてその能力の高さを誇示した。

 迎えた菊花賞。セイウンスカイはここで驚愕の逃走劇を披露する。

 ダービー馬スペシャルウィークに次いで2番人気に推されたセイウンスカイはすんなりと先頭を奪うと、馬の行く気に任せた横山騎手の舵取りに従って快調に逃げる。最初の1000mは59秒6という超ハイペースで、それを感じた後続は積極的に追いかける馬はいなかった。すると第1コーナーに入るあたりから一転、思い切ってペースを落として‟息を入れ”させ、向正面から再びペースを上げるという絶妙なレース運びを見せるセイウンスカイ。2周目の第3コーナーでは一時、後続に7~8馬身の差を付け、後続が仕掛け始めた坂の下りでもまだ5馬身ほどのアドバンテージをキープして直線へ向いた。

 詰めかけたファンが騒然とするスタンドの前でも、確かな足取りでゴールを目指すセイウンスカイ。横山騎手が仕掛けた変幻自在なペース配分の罠に幻惑された後続も懸命に追い込むが、それはもはや無駄な抵抗だった。中団から追ったスペシャルウィークに3馬身半もの差を付けて、セイウンスカイは偉大な企てを成功させた。走破タイムの3分03秒2は当時のレースレコードだった。

1998年 菊花賞(JRA公式)
 その後、セイウンスカイは1999年の日経賞(GⅡ、中山・芝2500m)、札幌記念(GⅡ、札幌・芝2000m)を勝ったものの、屈腱炎に罹るなど順調さを欠いたこともあってGⅠタイトルを上積みすることはできず、2001年の春に現役を引退。翌春から北海道で種牡馬入りしたが、2011年の8月、馬房での事故で命を落とした。

 数奇な生い立ちから、予想外の成功でセイウンスカイ。‟マイナー種牡馬”という不名誉な呼び名を付けられたシェリフズスターの置き土産は、名うてのトリックスターとしてその生涯を全力で駆け抜けた。
<了>

文●三好達彦
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