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【名馬列伝】「短距離王国」で異次元の強さを世界に証明したロードカナロア。陣営の英断が一流種牡馬への”希少価値”を築く

三好達彦

2024.01.25

 それでも距離延長に対する不安を指摘する向きもあって、単勝は1番人気に推されたものの、オッズは4.0倍と支持率は1200m戦よりもかなり低かったが、ここでもロードカナロアは満点回答を出して見せる。

 中団からレースを進めると直線で鋭い末脚を繰り出して先頭に立ち、後方から追い込んだショウナンマイティをクビ差抑えて、初のマイルGⅠを掴んだのだ。この勝利は単なる1勝という以上に、来たるべき「種牡馬入り」に際して1600mのGⅠを制したという意味で、その価値を著しく高めたと言える。

 夏の休養明けに出走したセントウルステークスはハクサンムーンの逃げを捉え切れず2着に敗れたが、ひと叩きされたロードカナロアはスプリンターズステークスの連覇に挑み、これを快勝。いよいよ現役最後のレースとして香港スプリントを選択。日本馬として史上初の連覇を目指して海を渡った。

 前年の圧勝を頭に刻んでいた香港の競馬ファンによって単勝1番人気に支持されたロードカナロアは、再び驚愕のレースを見せる。直線半ばで先頭に立つとさらに末脚を伸ばし、2着に5馬身もの差を付けて、自ら引退の花道を豪快に飾った。

 このレースは、世界のホースマンたちにも大きな衝撃を与えた。ワールドベストレースホースランキングにおいて、ロードカナロアは128ポンドという高評価を受け、豪州の伝説的スプリンターであるブラックキャビア(Black Caviar)の130ポンドに次ぐ極めて高い評価をつけた。それだけ、ロードカナロアの勝ちっぷりは非常に価値があった。
 
 スプリント・マイル戦で伝説的な競争成績を残したロードカナロアは引退後、北海道・安平町の社台スタリオンステーションで無事に種牡馬入りを果たし、初年度の種付料は500万円に設定された。

 すると希望者が殺到し、初年度の産駒は250頭にも及んだ。そしてファーストシーズンリーディングサイアーの座を射止めるとともに、産駒の中から牝馬三冠(18年)を成し遂げるアーモンドアイを送り出したことから人気はさらに急上昇した。

 15年生まれのダノンスマッシュが香港スプリント(20年)と高松宮記念(21年)を、16年生まれのサートゥルナーリアが皐月賞(19年)を制すと、産駒の活躍は芝路線だけにとどまらない。ダートGⅠであるJBCスプリント(金沢)をレッドルゼルが獲得し、ついに砂路線でもGⅠ馬が生まれた。産駒の猛烈な活躍により、20年シーズンの種付け料は2000万円まで高騰(2024年は1200万円)。人気に拍車をかけた。

 他にも、パンサラッサが昨年2月に世界最高賞金額(1000万ドル。日本円で約13億6000万円)のサウジカップを優勝。ダノンスコーピオン(22年・NHKマイルカップ)、ファストフォース(23年・高松宮記念)、ブレイディヴェーグ(23年・エリザベス女王杯)など多彩な路線でGⅠ馬を現在でも輩出し続け、トップサイアーとしての地位を確固たるものとしている。

 短距離から中長距離まで、さまざまなタイプの産駒を送り出しているロードカナロア。これからも、その偉大な血脈を受け継いだ産駒たちから目が離せない。

文●三好達彦

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