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海外サッカー

データを用いてナポリ、ローマ、ユベントスを徹底分析「根付きつつあるガスペリーニ哲学」「トゥドル監督にとって最優先の課題は」セリエA序盤戦総括(前編)【現地発コラム】

片野道郎

2025.10.08

(左から)ナポリのコンテ監督、ローマのガスペリーニ監督、ユベントスのトゥドル監督。(C)Alberto LINGRIA、(C)Getty Images

(左から)ナポリのコンテ監督、ローマのガスペリーニ監督、ユベントスのトゥドル監督。(C)Alberto LINGRIA、(C)Getty Images

 開幕から6試合を消化して10月の代表ウィークを迎えた2025-26シーズンのセリエAは、首位のナポリから、ローマ、ミラン、インテル、ユベントスが2~3ポイント差で続く形でトップ5を形成と、早くも順位表が固まってきた感がある。

 ただ、このトップ5の中での順位はまだ、対戦相手、チームの出来上がり具合、パフォーマンスと結果のズレなどによる「誤差」の範囲内と捉えるべきで、あと5試合戦って11月の代表ウィークを迎える頃になれば、シーズンの全貌がよりはっきりと見えてくるだろう。

 とはいえ、この6試合の戦いぶりからだけでも、各チームの状況はある程度見えてくる。ここでは、目先の結果よりもピッチ上でのチームのパフォーマンスに注目し、客観的な判断・評価の材料としてデータを使いながら、トップ5それぞれの現状と見通しを整理してみよう。データは『Opta Analyst』、『FBref』、『MARKSTATS』という3つのサイトを参照している。

 勝点15で首位を走るナポリは、中位~下位勢から取りこぼしなく5勝を挙げた一方で、ミランとの直接対決(アウェー)を落としている。こちらの記事(10月1日/デ・ブライネを「遊軍」として起用するコンテ監督の狙い、ナポリが目指すべき到達点は――「いまはまだ、試行錯誤を重ねている段階」【現地発コラム】)で見た通り、アントニオ・コンテ監督が、昨シーズンの優勝チームに、新戦力の目玉であるケビン・デ・ブライネをいかにして組み込むかを模索している状況にある。

 データを見ると、ボール支配率(62.2%)はリーグ1位、アタッキングサードのみの支配率であるフィールドティルト(69.9%)とディフェンスラインの高さ(52.4m)もリーグで2番目と、ボールと地域を支配し、主導権を握って試合を進めるスタイルがはっきりと表われている。

 ボールと地域を支配しても、ラスト30mで相手の最終ラインを攻略できなければ、ゴール、そして勝利には結びつかないが、この点でもナポリは十分な数字を記録している。得点(12)、そして作り出した決定機の質と量を示すゴール期待値(xG、1試合平均1.9)はいずれもリーグ2位。シュート数(同16.0)、枠内シュート数(同6.17)、ペナルティーエリアへのパス本数(同9.0)でもトップ3に入っており、攻撃最終局面のボリュームも十分だ。

 チャンスメイクはクロス(同22.2本=リーグ2位)が主体だがスルーパス(同3.5本=リーグ1位)も多く、ドリブル突破(成功数同6.5回=リーグ11位)は少ない。シュート1本あたりのxG(0.12)はリーグ1位で、決定機の質も高い。

 6試合で失点6はリーグ7位タイだが、得失点差(6)ではリーグ2位タイと、攻守のバランスは十分に取れている。PPDA(相手のボール保持機会あたり許したパス本数)10.7はリーグ8位、敵陣でのボール奪取数(1試合平均5.17)はリーグで下から6番目と、プレスの強度はそれほど高くないが、被シュート数(同10.3本)は4位、被枠内シュート数(同2.5本)は2位、被枠内シュート率(24.4%)もリーグで3番目に低い数字で、自陣低い位置での守備は堅固だ。

 こうしてデータを見ると大きな穴は見当たらず、攻守のバランスがよく取れていることがわかる。今後デ・ブライネがチームの中で機能し始めれば、さらなるパフォーマンスの上乗せが期待できるだけに、現状でこのレベルなら、今後も優勝戦線の主役を演じ続ける可能性は高いと言えそうだ。

 
 同じく5勝1敗の首位タイながら、得失点差で2位につけるローマは、6試合がいずれも中位~下位チームとの対戦であり、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ新体制の真価が問われるのはこれから。代表ウィーク明けにはインテル戦が組まれており、これが最初の試金石になりそうだ。

 ガスペリーニ監督といえば、マンツーマンディフェンスに基盤を置き、攻守ともに1対1のデュエルを重視するアグレッシブなスタイルが看板。それはデータにもはっきりと表われている。ボール支配率(59.3%)、フィールドティルト(65.8%)はいずれもリーグ3位、ディフェンスラインの高さ(50.2m)もリーグ4位。

 象徴的なのは、プレス強度を示すPPDA(8.6)、敵陣でのボール奪取数(1試合平均8.17回)がいずれもリーグ2位という数字だ。積極的に前に出る守備で、攻撃時はもちろん守備時にも敵陣で試合を進めようとするガスペリーニ哲学が、すでにチームにしっかり根付きつつある。

 気がかりなのは、敵陣で試合を進めている割には、ラスト30m攻略の質がやや低い点。7得点はリーグ9位タイ、ゴール期待値(1試合平均1.16)、シュート数(同12.8本)、枠内シュート数(同4.67本)はいずれも10位前後と、攻撃最終局面のデータは明らかに物足りなさを残している。

 ドリブル突破成功数(同5回)、スルーパス(同0.5本)がいずれもリーグ下位なのに対し、クロス本数(同12.7本)はリーグ5位と、チャンスメイクをクロスに頼っていることがわかるが、そのクロス成功率は19.7%(リーグ13位)と低い数字に留まっている。右ウイングのマティアス・ソウレが3得点を挙げているが、それ以外の得点はMF、DFでストライカー陣のゴールはゼロ。攻撃の完成度を高めていくのはこれからの課題ということか。

 それを補って首位タイの座をもたらしているのは、わずか2失点というリーグトップの堅守。すでに見たプレス強度の高さ、敵陣でのボール奪取の多さに加えて、被シュート数(1試合平均9.67本)はリーグ3位、被枠内シュート数(同2.83本)もリーグ4位と、自陣でのゴールプロテクションでも安定した守備を誇っている。6試合通算のゴール期待値3.7(リーグ1位)に対して2失点しか喫していないGKミル・スビラールの活躍も特記すべきだ。

 
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