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海外サッカー

ガットゥーゾの代表監督就任、任命したFIGCを伊紙が猛批判「この人事に哲学もビジョンも存在しない。あるのは、行き当たりばったりの末の絶望だけ」

THE DIGEST編集部

2025.06.22

解任のルチャーノ・スパレッティに代わり、イタリア代表監督に就任したガットゥーゾ。(C)Getty Images

解任のルチャーノ・スパレッティに代わり、イタリア代表監督に就任したガットゥーゾ。(C)Getty Images

 2026年北中米ワールドカップ欧州予選でイタリア代表は、初戦のノルウェー戦に0-3の大敗を喫し、いきなりストレートインでの本大会出場に黄信号が灯った。その結果、ルチャーノ・スパレッティ監督が解任され、その後釜としてジェンナーロ・ガットゥーゾの就任が発表された。

 スタッフには、長年にわたってガットゥーゾ監督を補佐してきたコーチのルイジ・リッチョとロベルト・ペローネGKコーチのほか、レオナルド・ボヌッチがコーチとして、さらにクリスティアーノ・ルパテッリがGKコーチとして入閣する。

 当初、後任として交渉を進めていたクラウディオ・ラニエリに断られる混乱を経ての監督人事の後、FIGC(イタリア・サッカー連盟)のガブリエレ・グラビーナ会長は「ガットゥーゾはイタリア・サッカーの象徴であり、『アッズーリ』は彼にとって第2の皮膚のようなものだ。我々は代表チームを中核に据えたイタリア・サッカーの再構築プロジェクトを共有している」と、「闘将」に期待を寄せている。

 しかし、この決定に対する批判は少なくなく、ローマの日刊紙『il Fatto Quotidiano』は、「わずかばかりの愛国主義、大きな混乱、そしてよく見れば、少しの臆病さもある。ガットゥーゾの指導歴には、ナポリ、バレンシア、マルセイユなどでの数々の失敗が並び、2024-25シーズンはクロアチアのハイデュク・スプリトに流れ着いた。それにもかかわらず、2006年ワールドカップの英雄のひとりだったというだけで、代表監督に抜擢されたのだ」と厳しく指摘した。

 同メディアは、現在の「アッズーリ」の運営で目立つ点として、「イタリアはイタリア人のものだという古臭い美談」「2006年W杯優勝メンバーへの過剰な称賛」を挙げる。ガットゥーゾの招聘も、それが根底にあってのことだが、問題なのは、彼を含めたこの「栄光のメンバー」の指導者としてのキャリアが、一様に凡庸なものであるということだという。

「ダニエレ・デ・ロッシはメディア受けこそ良いものの、監督としてはほぼ成果なし。ファビオ・カンナバーロは中国、クロアチアなどの経験があるが、ウディネーゼでの残留成功は偶然の産物だ。アルベルト・ジラルディーノはジェノアで解任、アレッサンドロ・ネスタはモンツァで最下位降格。アンドレア・ピルロはユベントスとサンプドリアで大失敗した」

 このように、複数人の失敗の数々を挙げた同メディアは、「唯一結果を出したと言えるのは、ファビオ・グロッソ(サッスオーロ)とフィリッポ・インザーギ(ピサ)だが、いずれもセリエBからAへの昇格止まり」と厳しく指摘。また、2006年には好守の要となった2人の偉大な選手に対しても容赦なかった。

「ジャンルイジ・ブッフォンは、引退後の空白が怖くて45歳までプレーを続けたが、最後の4~5年は完全に“蛇足”だった。フランチェスコ・トッティは、スポーツディレクターとしてのキャリアが上手くいかず、ローマのオーナー一族であるフリードキン家から完全に無視され、昨年には現役復帰を目論む始末だ」

【動画】イタリア代表監督就任会見に臨むガットゥーゾ & その“バックステージ”映像
 
 そして、同メディアはFIGCを「W杯で優勝した選手に代表チームを託せば、W杯に出場できると思っているようだが、現実は『貴族の末裔』的なプライドなど通用せず、今やイタリアは欧州の三流国にすら恐れられない時代になった。この人事には哲学もビジョンも存在しない。あるのは、彼らの行き当たりばったりな人事の末の絶望だけだ」と、その「懐古主義」を猛批判した。

 続けて「ガットゥーゾの招聘はブッフォン主導とも言われているが、これは何かあれば(言うまでもなく予選敗退)ガットゥーゾに責任を押しつけて、自分たちは保身に走るという連盟上層部の思惑によるものだという見方もある」と付け加えた同紙は、次のように記事をまとめた。

「さらに深刻なのはイタリア代表監督という名誉ある地位が、いまや二流、三流の監督の椅子になってしまったことだ。もはや代表監督候補の人材が、セリエAの下位クラブと同レベルという現実を示している。北中米W杯に行けなくとも、もはや驚かない。それでも私たちはいい意味で予想を裏切ってほしいと願うしかないのだ。“吠える男”がまともな監督として機能することを、ただただ願うしかない」

 最後に余談だが、同国のスポーツ紙『Gazzetta dello Sport』は、ガットゥーゾの代表監督就任を受けて、「2006年組」の現在に注目した。指導者やフロントなどを除くと、マルコ・マテラッツィが「インテル・レジェンズのメンバーとして世界中を回りながら、全てのインテル戦を欠かさず観戦。インドでの監督経験後は実業家に転身し、ペルージャにパデル施設を開き、サレント地方のワイン3銘柄を立ち上げた」。

 ルカ・トニは、「数少ない『監督にならなかった』王者のひとり」で、引退後はヴェローナのコンサルタントを務め(16年6月から1年間)、その後は『TV8』や『Rai2』の他、『Prime Video』、『DAZN』で解説者として活動中。アンジェロ・ペルッツィは、「自然の中で散歩を楽しむ年金生活者」と自称し、育ったラツィオ州ヴィテルボ県ブレラ村に住み、地元のジュニアサッカースクールを時折サポートしているという。

 アレッサンドロ・デル・ピエロは、テレビ出演とサッカーの両立を図りながら活動し、最近は指導者ライセンスを取得したと大きく報じられた。実業家として、米国ロサンゼルスにレストランを経営。さらに、自ら創設した「LA 10 FC」というセミプロクラブのオーナーも務めている。そしてヴィンチェンツォ・ヤクインタは、「やや波乱の“第二の人生”を送っている。2013年の現役引退の後、複数の法的トラブルに巻き込まれ、それらは今も解決していない」。

構成●THE DIGEST編集部

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