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MLB

究極の打者天国で交差する大谷翔平と野茂英雄。ホームラン・ダービーを前に思い起こすべき25年前の奇跡<SLUGGER>

出野哲也

2021.06.22

究極の打者天国クアーズ・フィールドで野茂(右)が成し遂げた快挙に、大谷も続くことができるだろうか。写真:GETTY IMAGES, REUTER/AFLO

究極の打者天国クアーズ・フィールドで野茂(右)が成し遂げた快挙に、大谷も続くことができるだろうか。写真:GETTY IMAGES, REUTER/AFLO

 大谷翔平(エンジェルス)が、MLBオールスター前夜に行われるホームラン・ダービーへの参加を表明した。その動機として大谷自身が「単純に日本人が出ているところを見てみたい」と述べていたように、日本人選手では初の快挙とあって、本戦以上に話題を集めるかもしれない。

 舞台がロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドであることも注目ポイントだ。オールスターは1998年以来、23年ぶり2度目の開催。当初はジョージ州アトランタに決まっていたのだが、同州で人種差別的な法律が施行されたのを受け、デンバーへ変更となった。そして、そのおかげで大谷の参戦はより一層盛り上がることになるだろう。というのも、クアーズ・フィールドはMLB30球場の中で最も打球が飛ぶ環境だからだ。

 ロッキー山脈の麓にあるデンバーは、海抜1610メートルの高地に位置していることから気圧が低く、空気抵抗が弱い。そのためクアーズ・フィールドでは、平地の球場に比べて9%ほど打球の飛距離が増すとされている。打者と投手のいずれが有利かを示す指標であるパーク・ファクターでは、90年代は常に120を超えていた。これは平均より20%以上も多く得点が多く入ることを示している。事実、98年のオールスターも31安打が乱れ飛び、13-8でアメリカン・リーグが勝利。合計21点は大会史上最多であった。
 
 ただでさえとんでもない特大アーチを量産している大谷が、飛距離にブーストのかかる球場でのダービーに参加するのだから、期待はいやが上にも高まる。メジャー1年目の18年5月にクアーズを訪れた、大谷は打撃練習で驚異的な打球を続けざまに放った。その光景を目の当たりにした『デンバー・ポスト』紙のコラムニスト、マーク・キズラは「死ぬまでに一度は体験しておくべきこと」として「万里の長城に登る」「アイスランドでオーロラと一緒に踊る」「クアーズ・フィールドで大谷の打撃練習を見る」を挙げたくらいだ。

 このような環境は、当然ロッキーズのチーム編成にも影響を与えている。球団創設以来2020年までの28年間で、延べ11人の首位打者を輩出している代わり、投手は規定投球回以上で防御率3.40以下のシーズンが2度だけ。極端すぎる打高投低に悩まされているのだ。少しでも打球の飛距離を減らすべく、ボールを冷蔵庫で管理して湿度を高めようと試みたこともあったが、はかばかしい成果は得られなかった。
 
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