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プロ野球

地元愛知出身で竜党を公言…中日はなぜ五輪の英雄・栗林良吏をドラフト1位で指名しなかったのか〈SLUGGER〉

西尾典文

2021.08.13

獅子奮迅の働きで金メダルをもたらした栗林は愛知県出身。ドラゴンズファンとして育った。(C)Getty Images

獅子奮迅の働きで金メダルをもたらした栗林は愛知県出身。ドラゴンズファンとして育った。(C)Getty Images

 例年以上にルーキーの活躍が目立つ今年のプロ野球だが、セ・リーグの投手で今のところナンバーワンと言えるのが栗林良吏(広島)である。故障で出遅れたフランスアに代わって開幕から抑えを任せられると、デビューから22試合連続無失点という日本記録を樹立。前半戦だけで18セーブをマーク。防御率0.53、奪三振率14.44と抜群の成績を残している。さらに、東京オリンピックでもクローザーとしてチームで唯一全5試合に登板し、2勝3セーブという獅子奮迅の働きで金メダル獲得に大きく貢献した。

 今となっては信じられないが、昨年のドラフトでこの栗林を指名したのは広島だけだった。特に、栗林の地元である中日が獲得へ動かなかったことに疑問を抱くファンは多いかもしれない。栗林は愛知県の出身で愛知黎明高、名城大、そしてトヨタ自動車とアマチュア時代の全ての期間を県内でプレーしている。大学時代は元ドラゴンズの山内壮馬投手コーチの指導を受け、本人も中日ファンであることを公言していた。地元路線を色濃く打ち出している中日にとってはまさに格好のターゲットのはずだった。
 
 なぜ中日は栗林の指名を回避したのだろうか。何と言っても大きいのが高橋宏斗(中京大中京高)の急成長である。高橋は2年秋の明治神宮大会で優勝投手となったものの、当時はそこまでプロからの評価は高くなく、数多くいる高校生の有力候補の一人という位置づけだった。しかし、コロナ禍による自粛期間で驚きのスケールアップを果たし、夏には高校ナンバーワン投手の地位を確固たるものとしていた。

 また夏の甲子園大会の代わりに行なわれた交流試合でも圧倒的なパフォーマンスを見せており、完全な形ではないものの栗林にはない“甲子園のスター”という付加価値も加わったことは大きかったはずだ。もし高橋が当初希望していた慶応大への入試に合格していれば中日もすんなり栗林を1位指名した可能性は高いだろう。

 もう一つ、栗林よりも高橋を重視した要因はチームの年齢構成だ。栗林は今年で25歳となるが、中日で近い年齢層の選手を見ると柳裕也(27歳)を筆頭に岡野祐一郎(27歳)、梅津晃大(25歳)、鈴木博志(24歳)、勝野昌慶(24歳)と右の本格派投手が充実している。一方、昨年のドラフト前の時点で20歳以下の若手となると上位指名は石川翔(17年2位)しかおらず、全体的に手薄な感は否めなかったのだ。
 
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