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【WBCプレイバック】大谷翔平×マイク・トラウト――偶然と奇跡が生んだ“世紀の対決”:前編<SLUGGER>

出野哲也

2023.12.29

トラウトと大谷、いつもはエンジェルスでチームメイトの2人がWBC決勝という大舞台で対決した。(C)Getty Images

トラウトと大谷、いつもはエンジェルスでチームメイトの2人がWBC決勝という大舞台で対決した。(C)Getty Images

 2024年の野球界で最も印象に残る瞬間と言えば、WBC決勝での大谷×トラウトの対決をおいて他にない。全世界が熱狂した世紀の大一番は、いくつもの偶然と奇跡によって生まれたものだった。
※SLUGGER11月号増刊『大谷翔平 2023総集編』より転載

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 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)史上最高の名場面であり、これを超えるものは今後も起こらないかもしれない――第5回大会の決勝戦、日本代表の大谷翔平が9回表のマウンドに上がって、アメリカ代表のマイク・トラウトを三振に斬って取り、優勝を決めたシーンである。

 かたや2021年のア・リーグMVPにして、史上最高の二刀流選手。こなたMVP受賞3回を誇り、殿堂入り確実な名外野手。地球上で最高の野球選手2人が、母国の誇りを懸けた一戦で最後の最後にぶつかっただけでなく、普段はエンジェルスでともに戦う仲間
でもあるという事実が、その対決を最高にドラマティックにしていた。

 WBCはまだ、サッカーのワールドカップのように、その競技の誰もが目標にしているイベントというわけではない。とりわけアメリカではそういった空気が濃厚で、トラウトも以前はWBC参加には消極的だった。17年の第4回も「個人的理由」で見送り、ロブ・マンフレッド・コミッショナーから「もっとこのスポーツのプロモーションに協力してほしい」と苦言を呈されていたほどだった。
 だが、同大会でアメリカが初優勝を果たすと、トラウトは「あの場にいるべきだったと後悔している。次は4年後? その時は多分出るだろう」と心変わりしていた。そして22年7月、アメリカ代表の主将として他のどの選手よりも早く第5回WBC参戦を正式に表明。「僕にとっても家族にとっても、国を代表することは大きな意味を持つ。胸に『USA』と書かれたユニフォームを着られるのはすごいことだ」と熱意を込めた。

 トラウトの参加は他のスーパースターたちを触発した。18年のMVP受賞者ムーキー・ベッツ(ドジャース)は「僕がWBCに参加する理由、それはマイク・トラウトと一緒にプレーできるからだ」と述べた。「僕たちが同じフィールドに立つ機会はそうそうない。
彼やその他の連中(=スター選手たち)と同じ側で戦うのはとても楽しいだろうね」。

 昨年のナ・リーグMVPポール・ゴールドシュミット、10年連続ゴールドグラブ獲得のノーラン・アレナード(ともにカーディナルス)も、前回に続いて参戦。21年ナ・リーグM
VPのブライス・ハーパー(フィリーズ)も、結局はトミー・ジョン手術のため辞退したが、選手集めに積極的に協力した。

 前回をも上回る最強のアメリカ代表が結成された理由を、GMを務めたトニー・リーギンスはトラウトのおかげだと説明した。「彼が早い時期に出場すると言ってくれたので、私が他の選手に打診するのがとてもやりやすくなったんだ」

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