侍JAPANの左腕が、WBC決勝で米国代表を打ち破ったマイアミのマウンドに、凱旋登板を果たした――。
【動画】今永昇太、オールスター・ゲームの舞台裏映像!大谷とのユーモアあふれるやり取りも
8月24日土曜日のマイアミ。そんな文脈で今永昇太(カブス)の登板を捉えたのは、残念ながら、日本メディアだけだった。
大谷翔平がエンジェルスの僚友(当時)、マイク・トラウトから空振り三振を奪った優勝決定の瞬間ですら、今は昔。その試合で先発し、勝利投手になったのが今永だったと知る現地記者は少なかった。
数日前、当の今永本人でさえ、「そう言われてみればそうでしたねぇ」と感慨深げに言うほど、もはや遠い記憶の出来事だ。地元シカゴのカブス番記者にとっては、単なる遠征地の一つに過ぎず、カブスが「消極的なワイルドカード争い」の渦中にいることと、マイアミがシカゴから時差1時間の東部地区であることから、主力記者の何人かが同時に欠席。それが結果的に、マイアミとWBC日本代表の関係を浮き彫りにした。
今永が7回2失点の好投で、昨年の千賀滉大(メッツ)に続いて日本人投手9人目の「MLB1年目での2ケタ勝利」を達成した試合後、主力記者の代打で取材に来ていたマイアミ在住の記者が不意に切り出した。
「WBCの決勝戦で先発登板したマウンドでしたが、何を思いましたか?」
今永はさほど表情を変えることもなく、こう答えている。
「あの時はホーム側(三塁側ベンチ)を使っていたので、ビジター側(一塁側)は初めてなんですけど、この湿気のある天気とかは『あの時もそうだったなぁ』と思い出しましたし、1年後にまたここで自分が立っているというのはすごく嬉しい気持ちです」
たった、それだけだった。いや、それだけで十分だったのかも知れない。
あの日、マイアミで大谷が言った「憧れるのをやめましょう」は、すでに歴戦のメジャーリーガーと対等以上に渡り合ってきた今永にとっては、日常の風景と化している。彼はメジャーリーガー相手に投げ続けながら、トライ&エラーを繰り返してきたのだ。 それはマーリンズ戦も同じだった。最初の3イニングは打者9人を打ち取る完璧な立ち上がり。4回、先頭打者にソロ本塁打を喫し、何の工夫もなく投げ続けていれば、下位球団の打者でさえも危険な存在になることを痛感した。後日、彼はこう言っている。
「(打順の)2巡目、3巡目と試合が進むにつれて、OPS(出塁率+長打率)が悪くなっているのは自分でもよく分かっているんです。それがこっちのバッターの対応力で、こっちがミスしたボールは簡単に長打になるし、たとえ凡打でも、一歩間違えば柵越していたような強い打球が飛んだとか、深いカウントまで粘られたりとか。アウトはアウトなんで、いいじゃないかって考えもあるでしょうけど、内容では負けているわけで、じゃあ、そうならないようにはどうしたら良いのか? と考えるわけです」
今永の言う通り、1巡目の被OPSが.527なのに対して、2巡目は.620、3巡目は.856と、出塁を許す確率も、長打を食らう確率も劇的に上昇している。それはどんな先発投手にとっても同じはずなのだが、彼にとっては容認できる数字ではないのだろう。
試合の序盤は高めの真っすぐ(4シーム)と低めのスプリット(・チェンジアップ)。相手が五分五分の確率でどちらかに張っていたとしても、「真っ向勝負」を挑むのが今永のピッチングだ。前半戦は、2巡目からスウィープ≒スライダーやスローカーブを投げて目先を躱したり、緩急に変化をつけていた。それが彼の理想通りにハマったわけではなかったが、それでも何とか、6回を投げ切ってきたというのが真実だ。
今はシーズン序盤のような、「キレッキレの状態」ではなく、シーズン佳境の「日によってバラつきがある状態」である。チームのトレーナーやストレングスコーチ、専属のマッサージ・セラピストのおかげで身体のメインテナンスに抜かりはないが、すでに24試合、140イニング、2114球を投げている。見えない疲労が蓄積していても不思議じゃない。
【動画】今永昇太、オールスター・ゲームの舞台裏映像!大谷とのユーモアあふれるやり取りも
8月24日土曜日のマイアミ。そんな文脈で今永昇太(カブス)の登板を捉えたのは、残念ながら、日本メディアだけだった。
大谷翔平がエンジェルスの僚友(当時)、マイク・トラウトから空振り三振を奪った優勝決定の瞬間ですら、今は昔。その試合で先発し、勝利投手になったのが今永だったと知る現地記者は少なかった。
数日前、当の今永本人でさえ、「そう言われてみればそうでしたねぇ」と感慨深げに言うほど、もはや遠い記憶の出来事だ。地元シカゴのカブス番記者にとっては、単なる遠征地の一つに過ぎず、カブスが「消極的なワイルドカード争い」の渦中にいることと、マイアミがシカゴから時差1時間の東部地区であることから、主力記者の何人かが同時に欠席。それが結果的に、マイアミとWBC日本代表の関係を浮き彫りにした。
今永が7回2失点の好投で、昨年の千賀滉大(メッツ)に続いて日本人投手9人目の「MLB1年目での2ケタ勝利」を達成した試合後、主力記者の代打で取材に来ていたマイアミ在住の記者が不意に切り出した。
「WBCの決勝戦で先発登板したマウンドでしたが、何を思いましたか?」
今永はさほど表情を変えることもなく、こう答えている。
「あの時はホーム側(三塁側ベンチ)を使っていたので、ビジター側(一塁側)は初めてなんですけど、この湿気のある天気とかは『あの時もそうだったなぁ』と思い出しましたし、1年後にまたここで自分が立っているというのはすごく嬉しい気持ちです」
たった、それだけだった。いや、それだけで十分だったのかも知れない。
あの日、マイアミで大谷が言った「憧れるのをやめましょう」は、すでに歴戦のメジャーリーガーと対等以上に渡り合ってきた今永にとっては、日常の風景と化している。彼はメジャーリーガー相手に投げ続けながら、トライ&エラーを繰り返してきたのだ。 それはマーリンズ戦も同じだった。最初の3イニングは打者9人を打ち取る完璧な立ち上がり。4回、先頭打者にソロ本塁打を喫し、何の工夫もなく投げ続けていれば、下位球団の打者でさえも危険な存在になることを痛感した。後日、彼はこう言っている。
「(打順の)2巡目、3巡目と試合が進むにつれて、OPS(出塁率+長打率)が悪くなっているのは自分でもよく分かっているんです。それがこっちのバッターの対応力で、こっちがミスしたボールは簡単に長打になるし、たとえ凡打でも、一歩間違えば柵越していたような強い打球が飛んだとか、深いカウントまで粘られたりとか。アウトはアウトなんで、いいじゃないかって考えもあるでしょうけど、内容では負けているわけで、じゃあ、そうならないようにはどうしたら良いのか? と考えるわけです」
今永の言う通り、1巡目の被OPSが.527なのに対して、2巡目は.620、3巡目は.856と、出塁を許す確率も、長打を食らう確率も劇的に上昇している。それはどんな先発投手にとっても同じはずなのだが、彼にとっては容認できる数字ではないのだろう。
試合の序盤は高めの真っすぐ(4シーム)と低めのスプリット(・チェンジアップ)。相手が五分五分の確率でどちらかに張っていたとしても、「真っ向勝負」を挑むのが今永のピッチングだ。前半戦は、2巡目からスウィープ≒スライダーやスローカーブを投げて目先を躱したり、緩急に変化をつけていた。それが彼の理想通りにハマったわけではなかったが、それでも何とか、6回を投げ切ってきたというのが真実だ。
今はシーズン序盤のような、「キレッキレの状態」ではなく、シーズン佳境の「日によってバラつきがある状態」である。チームのトレーナーやストレングスコーチ、専属のマッサージ・セラピストのおかげで身体のメインテナンスに抜かりはないが、すでに24試合、140イニング、2114球を投げている。見えない疲労が蓄積していても不思議じゃない。
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