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高校野球

まさに冷静沈着。ピッチトンネルを駆使した日大三高のエース・近藤のマウンドさばきに強打の県岐阜商も脱帽<SLUGGER>

氏原英明

2025.08.22

初戦と2戦目は完投、準々決勝と準決勝ではリリーフで6イニング近くをこなすなど、近藤は淡々と役割を果たし続けている。 写真:THE DIGEST写真部

初戦と2戦目は完投、準々決勝と準決勝ではリリーフで6イニング近くをこなすなど、近藤は淡々と役割を果たし続けている。 写真:THE DIGEST写真部

 決勝進出を決めても、日大三高のエース・近藤優樹に興奮した様子は見られなかった。囲み取材が始まってもその落ち着きぶりはマウンドさながらで、記者たちの質問一つ一つに淡々と答えていく姿はとても大人びていた。

「疲れは正直に言ってそんなにないんですけど、任された所でしっかり抑えようと思っていました。(意識したのは)球が速くないので、高めとか、間とか、いろんなところを変えていますね」

 準決勝第1試合で驚いたのは、優勝候補の横浜投手陣に16安打を浴びせて粉砕した県立岐阜商の打線が見る影がなくその勢いをなくしてしまったことだ。パフォーマンスそのものが下がってしまって元気がなかったというより、全力を出させてくれないと言った方がわかりやすいかもしれない。

 県立岐阜商・藤井潤作監督は話す。

「近藤くんは本当にコントロールのミスがないピッチャーでした。間をうまく使ってバッター心理を揺さぶられているように思いました、ここっていうところで長く持ってみたり、牽制を入れてきたり、上手いピッチャーだなと思いました」
 
 近藤は、いわゆるマウンドさばきがうまい投手だ。ストレートの球速が高速化にある今の時代にあって、130キロ台とそんな速くなく、それでいて変化球を巧みに投げ分けた。時折、100キロほどのカーブを挟んで打者の様子を伺ったり心憎いピッチングだった。

 日大三高の捕手・竹中秀明は近藤のピッチングをこう話す。

「ピッチトンネルを意識するようにしています。とにかくストライクゾーンを広く使って、変化球は低く。ストレートは意識づけに使ってですね。バッターに球種の判断を遅らせることはできていたのかなと思います」

 ピッチトンネルとは分かりやすく言えば、投球術の一つだ。バッター側からは同じ軌道に見えて、目前で変化する。投手の投げたボールはどの球種もトンネルを通るように同じ軌道を描いてくるのだが、トンネルを抜けた途端にボールの軌道が変わる。データサイエンスが進む今の野球界では主流になりつつある。

 いわば、打者の判断を遅くするため、変化球を絞りにくくして、なおかつ、ストレートにも手が出にくくさせるというピッチングである。

 近藤は5回に1安打を許して失点につなげてしまったものの、それ以降は危なげないピッチング。チームが8回に同点に追いつくと、タイブレークにもつれた延長10回は2点リードすると、県岐商打線を無失点に抑え勝利を挙げた。
 
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