プロ野球

【現役スター名場面5選:山田哲人】応援歌・“新たな時代”を自ら体現し、プロ1年目から数々の記録を作り上げる天才打者

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.05.23

背番号「23」から「1」に変わる過程で、文字通り球界No.「1」プレーヤーへと進化を遂げた。提供:朝日新聞社

 スターがスターたる所以は、ファンの記憶にいつまでも残るような名場面を生んでくれるからだ。開幕の見通しが立たない今だからこそ、改めて現役スター選手の「名場面」を振り返って元気を取り戻そうではないか。今回取り上げるのは、"プロ野球歴代最強二塁手"との声すらある山田哲人(ヤクルト)。編集部の独断と偏見で選んだ5つの名場面をランキング形式で紹介しよう!

▶5位 高卒新人ながらCSの大舞台で一軍デビュー 
(2011年11月3日・中日戦/ナゴヤドーム)

 山田は、というべきかヤクルトは非常に幸運だった。今でこそ信じられないが、山田のドラフト指名は「外れ外れ1位」。2010年ドラフトで、ヤクルトは最初に斎藤佑樹(早稲田大/現日本ハム)のくじを外すと、次の塩見貴洋(八戸大/現東北楽天)に敗れた後で山田を選択。オリックスとのくじ引きに勝って指名権を獲得した。

 プロ1年目、レギュラーシーズンでは一軍からお呼びがかからなかったが、中日とのCSファイナルステージ第2戦で、1番・遊撃手として何といきなり先発出場。CSで高卒新人野手がスタメン出場するのは山田が初めてのことだった。

 この試合は4打数無安打に終わったものの、第3、4戦では初四球・初得点・初安打・初打点を記録。伊勢孝夫総合コーチ(当時)は「入団してきた時の池山(隆寛)以上や」と評した。このときはまだ背番号「23」だったが、伊原氏の見立て通り、山田は池山と同じように"ミスター・スワローズ"の背番号1を継承し、文字通りNo.「1」プレーヤーへと歩みを進めていく。
 
▶4位 さすが千両役者! 通算200号は劇的なサヨナラ満塁ホームラン
(2019年9月5日・広島戦/神宮球場)

 走攻守+選球眼を併せ持った完璧な野球選手を体現する山田には、それゆえに悩みがある。勝負を決める場面、彼はかなりの高確率で勝負を避けられてしまうのだ。プロ通算8年間でサヨナラ打は3回と意外に少ない。といっても、そのうちの1本は「劇的」という言葉で形容しきれないほどの一撃なのだから、"さす山(さすが山田)"である。

 昨年9月5日の広島戦。7対7で迎えた9回裏2死満塁という場面で山田が打席に入った。マウンドにはフランスア。0-1から投じられた外角速球を山田が一振りすると、打球は一瞬でそれと分かる当たりで神宮の夜空を引き裂き、レフトスタンドへ飛び込んだ。

 いつもはクールな山田が「自分でもビックリしています!」と興奮さながらに語ったのは、これが"ただの"サヨナラアーチではなかったからだ。この一発で山田は通算200号本塁打に到達。27歳1ヵ月での達成は清原和博、王貞治らに次ぐ史上5番目の年少記録であった。
 
NEXT
PAGE
自ら応援歌の歌詞を体現する活躍で伝説に!