キャプテンによる完璧な犠打が、巨人のこの試合にかける思いを代弁していた。
「そういうシチュエーションの中で1発でバントを決められたっていうのが、流れの中で相手にプレッシャーをかけられた。そのあと丸が犠牲フライを打ってくれたので、その犠打を輝かせてくれた」
巨人・原辰徳監督が振り返ったのは2−1で迎えた8回表のシーンだった。
先頭の亀井善行が安打で出塁、牽制悪送球で無死二塁の好機を作ると、2番の坂本勇人が送りバントを決めたのである。
リーグ2位の35本塁打を放っている坂本に犠打を命じるという作戦に、勝ち方を知った指揮官のチームの動かし方を垣間見た気がする。坂本の犠打の後、丸が犠牲フライを放ち巨人は貴重な追加点を挙げた。
天王山と位置付けられたこの日の試合、1番の注目はDeNAのエース・今永昇太が巨人打線をどう封じるかだった。ほぼ完璧に近い形で抑えて勝つことができれば、2戦目以降にも影響する。ラミレス監督が、中8日を空けて今永を先発に立ててきた背景には、そうした狙いがあったに違いない。
一方、原監督が先発に送り出したのは、これまでキャリアの大半をリリーバーとして投げてきたクックだった。これは奇策に見える一方、実は、原監督の一戦必勝に賭けた戦い方でもあった。 クックの抜擢は、ファームでの先発調整がうまくいっていたのに加え、初回から全力で立ち向かわせて相手打線に捕まればすぐに代え、小刻みにつないでいくことで相手の目先を変えていく狙いもあったに違いない。
事実、原監督は、4回途中、2人の走者を背負ったところでクックを交代させている。
このピンチを高木京介が抑えると、5回も無失点。6回からは田口麗斗、7回途中から大竹寛につなぎ、8回から勝ち継投に結びつけた。
一方、打線は6回表二死から3番の丸佳浩が四球で歩くと、4番の岡本和真が初球のチェンジアップを叩き、左翼上段へ叩き込む逆転2点本塁打。選球眼に優れた丸の出塁と岡本の一発という、これしかない効果的な逆転劇だった。
要所要所で、個々の選手が役割を果たしていくことで、今永を攻略した。
8回表の坂本の送りバントは、チームが一体となった中で成功したものと言えるのだ。
おそらく原監督は、明日からいつも通りの戦いに戻すだろう。
あくまで、この試合は絶対に落とせないと踏んだから、一戦必勝の戦い方を選んだに違いない。
それだけ、指揮官がこの一戦の重みを理解していたということだ。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
「そういうシチュエーションの中で1発でバントを決められたっていうのが、流れの中で相手にプレッシャーをかけられた。そのあと丸が犠牲フライを打ってくれたので、その犠打を輝かせてくれた」
巨人・原辰徳監督が振り返ったのは2−1で迎えた8回表のシーンだった。
先頭の亀井善行が安打で出塁、牽制悪送球で無死二塁の好機を作ると、2番の坂本勇人が送りバントを決めたのである。
リーグ2位の35本塁打を放っている坂本に犠打を命じるという作戦に、勝ち方を知った指揮官のチームの動かし方を垣間見た気がする。坂本の犠打の後、丸が犠牲フライを放ち巨人は貴重な追加点を挙げた。
天王山と位置付けられたこの日の試合、1番の注目はDeNAのエース・今永昇太が巨人打線をどう封じるかだった。ほぼ完璧に近い形で抑えて勝つことができれば、2戦目以降にも影響する。ラミレス監督が、中8日を空けて今永を先発に立ててきた背景には、そうした狙いがあったに違いない。
一方、原監督が先発に送り出したのは、これまでキャリアの大半をリリーバーとして投げてきたクックだった。これは奇策に見える一方、実は、原監督の一戦必勝に賭けた戦い方でもあった。 クックの抜擢は、ファームでの先発調整がうまくいっていたのに加え、初回から全力で立ち向かわせて相手打線に捕まればすぐに代え、小刻みにつないでいくことで相手の目先を変えていく狙いもあったに違いない。
事実、原監督は、4回途中、2人の走者を背負ったところでクックを交代させている。
このピンチを高木京介が抑えると、5回も無失点。6回からは田口麗斗、7回途中から大竹寛につなぎ、8回から勝ち継投に結びつけた。
一方、打線は6回表二死から3番の丸佳浩が四球で歩くと、4番の岡本和真が初球のチェンジアップを叩き、左翼上段へ叩き込む逆転2点本塁打。選球眼に優れた丸の出塁と岡本の一発という、これしかない効果的な逆転劇だった。
要所要所で、個々の選手が役割を果たしていくことで、今永を攻略した。
8回表の坂本の送りバントは、チームが一体となった中で成功したものと言えるのだ。
おそらく原監督は、明日からいつも通りの戦いに戻すだろう。
あくまで、この試合は絶対に落とせないと踏んだから、一戦必勝の戦い方を選んだに違いない。
それだけ、指揮官がこの一戦の重みを理解していたということだ。
文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。